午後1時。
待ち合わせ場所に行くと、遼介は既にそこで待っていた。
……そして聖蘭高校生らしき女子に囲まれていた。
「めんどくさ……」
はぁ、とため息が出る。
遼介と付き合ってから、聖蘭高校で私達のことを知らない人はほぼいない。入ってくる新入生も、遼介を狙えば必ず私の存在を知ることになり、勝手に噂として広めてくれるからだ。
けれど、三年生の秋といえば、もうすぐ卒業。遼介を見る機会もなくなる。そのため、聖蘭高校の女子(ほぼ下級生)は姿を見つける度に遼介を取り囲むようになった。
まぁ気持ちはわからなくもないけど……とにかく面倒なんだよね。
「ごめん、待たせて」
近付いてそう言うと、そこにいた全員の視線が私を向いた。
うわ、これこれ。この瞬間大っ嫌い。
心の中で思いっきり嫌な顔をする私に、遼介は嬉しそうな笑顔を見せた。
「気にすんなあなた。行こうぜ」
じゃあな、と女子達に別れを告げて、その後は名残惜しそうな女子達へ目もくれず私の元に歩いてきた。
こういうのはちょっと……嬉しい。
「何笑ってんだ?」
「別に。遼介って私のことすごい好きだよなって思って」
「は!?」
途端に赤くなる遼介がおかしくて、笑う。そんな私達の手が自然に繋がる。
他愛ない話をしながら、私達は歩みを進めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。