「…………」
色とりどりの花が詰まった、花束だった。
「……俺達、付き合って二年だし、今回は何かあげようと思って……いろいろ迷ったけど、花束にした」
「…………」
「花ってな、どれにも『花言葉』があるんだよ。どの言葉も、お前への気持ちだ」
ん、と花束を差し出される。
私は戸惑った表情のまま、その花束を受け取らずに突っ立っていた。
「……なんで受け取らねぇんだよ」
「え、……あ、いや、……花束とか、卒業の時くらいしかもらったことないから。それも部活の後輩達からで」
言葉が途切れ途切れになる。遼介の視線が突き刺さってくるようで、思考回路がこんがらがる。
「えっと……トイレは口実だったの?」
「聞きたいのはそんなことか!?」
「ご、ごめん、もらう」
「……おう」
たどたどしく花束を受け取る。
少し重みがあって、懐かしいけれど、確かにそれとは違う“特別”なものだと感じた。
綺麗な花々を見つめていると、恥ずかしくなったのか遼介が話し出した。
「いろいろ入ってるけど、言うのはあれだから家帰ったら調べてみろ。花言葉。結構悩んだんだよ」
「……なんか、付き合ったばかりの頃と全然違うね、遼介。もっと遠慮がちだったのに」
「それ言ったらお前だって、あんなに初々しかったのに今は平然としてんじゃねぇか。キスもすげぇ上手くなっ――」
「花束投げるよ」
「すみません失言でした」
瞬速で謝ってきたので、まぁ許してあげた。
っていうか本当、コントみたい。何してんだろ街中で。
「これ持って帰るの恥ずかしいな……」
「……悪い」
「ふふ。――ありがとう」
花束を抱きしめるように抱えて、満面の笑みで言う。
“私も、遼介が大好きだよ。”
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。