意識の遠くからアラームが鳴る。
早く止まってくれ。俺はまだ眠いぞ。
俺がそう願うだけでアラームが止められる。
………というのは嘘で、隣で寝ているまろが止めてくれる。
少しガサゴソと動いて、小さい唸り声が上がる。
こいつはそれだけでパッと起きられるんだからすごい。尊敬。
サラッ、と頭を撫でられる。
心地良くて、また夢の中へ沈んでいった。
自然に目が覚めて、空いた隣へ手を伸ばすと残っていた体温ももうなくなっていて、だいぶ二度寝してしまっていたことに気付く。
ああ、あったかい。出たくない。外寒いよ絶対。
でもまろと朝ごはん食べたいしな。
うん、勢いしかない。
おりゃ、と心の中で呟いて思いっきり起き上がる。
寝室を出ると、もう既に支度を終えたまろがコーヒーを淹れているところだった。
いやこんなドラマでしか見ないような光景ほんとにあるんだ。スパダリかよ。
顔を洗おうと内心猛ダッシュで洗面所へ。
多分端から見たらのろのろと歩いているだろうけど。
諸々を終えて食卓へつく。
今日の朝ご飯兼昼ご飯は、かきたまうどんだ。
シンプルだけどこういうのが一番美味い。
途端、ぐぅー、と鳴る腹。
思わず向かいに座るまろを見ると、笑ってる。
そんなにお腹減ってたんだー、とからかってくるから、だって美味そうだし。と今日だけ素直に返してみる。
まろは少しだけ驚いたような顔をして、すぐ嬉しそうに微笑んだ。
ほんと、お前はつくづく馬鹿だ。
まっすぐと俺の目を見てそう言った。
まろはいつもそうだ。
好きだとまっすぐ伝えてくる。
もう一緒になって何年も経つというのに、まだ慣れん。
だからか、と乗ってはみるものの、目を合わせられない。
あー、照れてるのが丸わかりだ、俺。
早く食べよ、と言って誤魔化した。
二人の声が重なる。
同棲を始める時、まろがなんとなしに言ってきた。
彼奴の中で決定権はあくまで俺に持たせるところが、意地悪で優しさでかっこよくて。
それに俺はちゃんとした回答を未だしていないが、阿吽の呼吸だろうか。
それは何気に二人の間の約束のようになってしまった。
夜まで仕事である事が多い俺等は、これまですれ違いや喧嘩をした時、まともに話す時間が取れなくて何度も破局危機が訪れそうになった。
それでも今二人でいられるのはお互いが一番大切で、お互いを幸せにしたいと思っているから。
嬉しかった事も、悲しかった事も、何もかも全部話せるようになったのはこの時間のおかげと言っても過言ではない。
感謝します。あざす。
今日の俺は珍しくオフで、まろは今から出勤。
じゃあ掃除して、あ、風呂の掃除もしとこ。それ以外は…仕事かな。
うどんを啜りながら頭の中でざっくり計画を立てる俺を見て、まろはこっそり思う。
ばか、こっち見んなし。
俺もちゃんと幸せだから。
俺みたいなぴょっこり寝癖をつけていないイケメソ恋人が自分の作ったうどんを食べながら、「やっぱ美味いな」と言っている。
自画自賛も程々にしろよ、とでも言ってやりたかったが生憎本当にそうだからぐうの音も出ない。
突然まろの口角が上がった。
まろに目を合わせると、微笑みかけられた。
あぁイケメンなんだよな、くそ。
時計を見ると、そろそろ出ないと遅刻しそうになっていた。
時の流れとは早いもんだ。
大人になってしまったということをこんなことで感じたくない。
うどんのつゆを一気に飲み干して、ちゃんとご馳走様を言う。これだけは忘れない。
流石育ちがいいな、ってちょっと笑えてくる。
別に俺もしないわけでもないけど、律儀すぎるでしょ。
遅刻するよ?
触れるだけのキスをする。
これもいつの間にか決まったルーティーン。
もう恥ずかしさはあまり無いけれど、仕事に行きたくなくなってしまうのが少しデメリットかな。
離れがたいな、なんて付き合いたての頃は言ってくれてたのに。
なんて女々しいことを考えるような俺でもない。
可愛げのない彼女になってしまったもんよ、俺も。
なんて思っているとバタン、とドアが閉まる音がした。
こりゃ彼奴走らなきゃ間に合わねぇわ。
キスしなかったらよかったのに、なんてね。
俺は伸びをして、これからのすべきことをしよう。
次またまろに会うまで、あと______













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!