第79話

💙🩷「エスパー」
298
2026/04/22 22:00 更新


誰も祝ってくれてないので、自分で祝います。
400人いきました👏🏻
祝ってくれたら嬉しいです。



⚠今回の小説は嘔吐表現・キモモブ出現です。地雷の方は過去作でもご愛読下さい。





N
ッッ


今日の会議には、俺とちょっと波数が合わない人がいた。


俺の意見を全否定して、あたかも自分だけが正解だと言わんばかりの圧で此方を見てくる感じ。


担当の人が病欠で今日だけは違う人が来てたらしい。





波数が合わないからなんだ、社会人になったら子供のように離れる環境すら自分たちで作ることは不可能。


嫌いだから、で関わらなくていいわけないのが大人になった定め。


可愛くない世界だなって呆れ笑う。


それでもこの世界に足を運んだ自分を、俺だけは肯定していかないと本当の意味で人間は駄目になる。


機能しないとかそんな優しい言葉じゃ表せないくらい。


……人間でいる意味を失う。




N
ハァ…ハァ…ッッ




……そっくりだった。


活動を始めて会社の掛け持ちすら頑張っていたあの頃の大嫌いな上司に。


ひたすら俺のことを性的な目で見てきて、誰も居ないところで触ってくるあの男に。










会議が終わって一通り挨拶をしていると、やけに握手が長い人がいた。


それくらいならまだ良かった。


そこからだったのだ、あれが狂ったように見えたのは。


やけに俺の目を舐め回すように見つめてくると思ったら耳元で一言。


「…この手、俺のアナに入れたいなぁ♡♡♡」





正直そこからの記憶はない。


気づいたら俺の家まで足が向いていたし、どうやって帰ったのかすら覚えてない。


誰かにぶつかったかな、仕事って全部してから帰ったっけ。


逃げ出したみたいになってないかな。


自分の全てが恐ろしい、こんな感情は本当に久しぶり。





N
……ねぇ、立って
N
立ってよ俺の足ッッ


自分の体の癖して全く命令が聞かない。


足が震えてるわけでも、痛感すらないわけでもない。


ただ動かせない。


金縛りにあったかのようにただ体が重くなる。


玄関に座ってるだけあって、手がひんやりとした床から体温を奪われていく。


いっそのこと俺すらも溶けてしまいたい。


真夏に出された、冷凍庫から出したばかりのアイスのように。


春を迎えてゆっくりなくなっていく雪のように。




なんて、そんなことを願ってしまった俺はわがままなのだろうか。



















夜中、ずっと疲れたはずなのに寝れる気配がない。


辺りに聞こえるのは車の通る音のみ。


俺の呼吸音すら、自分の心音が大きすぎて聞こえるはずもなかった。


……鼓動が早い。


とくとくと胸を打つ感覚がやけに気持ち悪い。


目を瞑る。


全ての感覚が閉ざされて、集中・リラックスできる。


そんなはずなのに、今は不快でしかない。


目に映るのは真っ暗なスクリーンに映し出される過去の自分。


まろに会う前の壊れた俺。


N
寝ないとっ明日も仕事があるってのにッッ



上司からずっと聞かれるある台詞「ねぇ今夜暇?」

同期から言われ続けた誂いの言葉「お前なら余裕で抱けるwww」

女の人からも言われたモブを貶す一言「ないこくんなら、初夜上げてもおもしろそーwww」




全てが白黒の世界だったはずなのに、もう白さえも見えなくなった。


ただでさえ仕事で疲れ切っているのにこの有り様。


俺は神様にたいそう酷いことをしたのだろうか。


従順に生きた罰なのだろうか。





初めてまろに打ち明けた際、俺は泣いていることに気づかなかった。


まろが「……ないこ、やっと俺の前で泣いた笑」と笑ってくれたのが唯一の救いだった。


泣く、ただその行為ひとつのだけなのにあれだけ自分に素直になれたのは初めてだった。


気づいたら涙を止める方法すら忘れていてまろに縋った。


今思えば酷い姿だっただろう。


年下とは言え、これほど弱って今にも壊れそうな人間をみるのは、たとえあのまろでも怖いはず。


実際にまろはあの時のことを俺に話してくれない。


どんな感じだったっけ〜、と聞いてもはぐらかされる。






あの時、まろが近くにいないと俺はどうなっていたのだろうか。


俺がまろと関わろうと思わなければ。


俺が活動を始めなければ。


N
ヒューッッ
N
!!




あぁ、過呼吸だ。


体は悲鳴を上げているはずなのに、心の俺はやけに冷静だった。


まるでこれが初めてではないことを示唆しているかのように。


狼狽した頃を思い出すのも今となっては難しい。


目の前がチカチカしだす。


あの頃のほうがもっと人間ぽかったぞっと若干今の俺に活を入れる。


どうして今日のあの一件だけでこれほど弱ってしまうのか。


俺はつくづく弱い人間だな、となんだか面白くすらなってくる。




N
(あ、吐き気…)


吐くと分かった瞬間にトイレまで急いだのは、もう癖かもしれない。


掃除をするのが面倒くさい、胃酸の匂いに包まれて寝たくない。


自分の身体の心配よりもこれからのことについてのだるさが頭に浮かぶ。


…可愛くない人間だな。


心底そう思う。














『まろの声が聞きたい』




ただそれだけの感情だった。


他には何も望まない、ただ息をしているまろの声が聞きたかった。


それだけの感情で、俺は収まらない吐き気を他所にまろの携帯へ一報入れる。







♬~~~
N
(一回…)





♬~~~
N
(二回…)




♬~~~
N
(三回…)






あれほど、社畜な彼が3コールで出ないのが物語った。


いくらなんでもこの時間帯なら出ないか笑


彼女なんだけど〜www



笑えてくるのは何故だろう。


俺のえづく声だけが酷く大きく聞こえた。




















トイレの小さな個室に大きな体を縮めて中に入れる。



吐き疲れた。

と言っても、夜帰ってからなにもしていないから出てきたのは胃酸だけ。


臓器傷つくらしいじゃん?こりゃやばwwwと他人事のように笑えてくる。


そんな自分に唖然とする。


キモいなぁwww、変な奴、


誰かから言われた言葉を今は、俺が俺自身に直接訴えかける。


そんなんだったらいつまろに捨てられても可笑しくないじゃん。


涙すら流れない俺は本当にまろの彼女なのだろうか。


別れることに辛いという感情が出なかった。








ピーンポーン








N
……


インターホンが聞こえた。


久しぶりに他の音を聞いた気がする。


誰が来たかは大体予想が着くけど、理由が思い浮かばない。


俺が出ても意味があるのだろうか。



N
よいしょっと



そんなことを考えていたはずなのに、”やっぱり体は正直だね”とありがちなBLセリフを思い出す。


俺の持論でこれは正しいのかもしれないということが証明できそうだ。





N
やっほぉ〜
l
………





なんだよ、そんな鋭い目つきしあがって。


そんな睨まれても俺は浮気なんてしてないからな。





と、顔ばかり見ていて今のまろの容姿を見てなかった。


なんだ、お前パジャマじゃん。


N
なにしに来たの笑
l
………
N
俺はエスパーじゃないんだからさぁ?
N
話してくれないとわかんないよ?





そこから数秒、お互いが何も発しない空気が続いた。



そして、そんな空気を破ったのは意外にもまろの方だった。




l
…ほら、俺に言いたいこと
l
なんかあるんちゃう?











まろに……言いたいこと………









N
こぇ……ききたいッッ



l
ないこ
N
ッッ
l
大好きだよ
l
この世の誰よりも、ずっとずっっと













そこからの俺は醜かった。


N
俺なんかしたかなっ、神様はやっぱ狡いよッッ
N
なんで辛い時に限って側にいないのっ
N
なんで電話に出てくれないのっ
N
なんでぎゅってしてくれないのっ



N
なんでまろは俺の彼氏なのッッ



何をまろにぶつけているのかわからない。


そんな俺を強く抱きしめるまろ。


硝子製品はワレモノ注意と段ボール箱に貼られる。


今の俺もその状況と変わりない。


それなのに、なんでお前は強く抱き潰すようにぎゅってするんだよッッッ





l
ほら、ないこ
l
「俺はまろが好きです」って言って?
N
っふざけてるの?
N
それともなに、バカにしてる?
l
ほらっ
N
……








N
俺はまろが好き…です……
l
(グイッ
N
!!


その言葉とともに俺の唇が奪われる。


まろの舌が俺の唇を強引に開けさせて、口内までもまろ一色に染められる。


…体が熱くなる。


まろに身を委ねて俺は瞳を閉じた。


息の方法すらも忘れるくらい、まろとのゼロ距離が長く続いた。














N
ん…


目が冷めた、


ということはいつの間にか眠っていたのだろう。


俺には眠った記憶もないからきっとまろが運んでくれたに違いない。


そんなことを考えていると、寝室のドアにもたれかかって珈琲を持った男が現れた。


l
おそよーないこたん
N
おそよー?
l
今14時やからさ笑
N
えッッッ!?
l
アハハwおもろーwww



近くの時計を見ると、時刻はやはり正午すらも過ぎていた。


やらかした、どころの話ではないけどもうここまできたら開き直る。


今日は何をしようか、すっと起き上がろうとしたとき


ベットがちょっと沈んだ。


沈んだ先に目を向けるとまろが見つめる形で座ってくる。







l
ないこが昨日俺に「俺はエスパーじゃない」って言った
l
覚えてる?
N
……やんわりとなら




言ったような言ってないような。


そんな淡い記憶。


だって昨日何したって言われたら吐いたくらいしか思いつかないのに。






l
俺は誰かさんと違ってエスパーです



俺の彼氏は可笑しいのかもしれない。


刹那、まろがそんなことを喋りだした。





l
ないこが辛いなら俺わかるんよね、すごない?
N
…うそばっか
l
ほんまやって笑
l
ないこセンサー感知するから
N
ねぇ、やだ笑




l
でも、俺はないこの口から直接聞きたい
l
どんなわがままでもちゃんと受け止めるから
N
……



l
じゃあこれからの課題ね?
N
……課題なんて大学で終わったと思ってたのに
l
じゃあレポートも出してもらおうか?
N
なにかくんだよwww



特になにも聞こうとしない。


昨日なんであんなに自我を失っていたのか。


生きる意味すら失ったまるで灰のようになった人間になっていたのか。


まろだって気になってるはずなのに。


それがお前の優しさならば今は目一杯甘えるとしよう。









いや、まろはわかってるのかもしれない。


















だって君はエスパーなんだもんね。



































初心忘るべからず




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