・桃×mob要素🙆🏻♀、🙇🏻♀
・曲パロ
4side
初めてその場に遭遇したとき、もう何の感情も抱かなかった。
腹立つとか悲しいとか怒りとかそんなの無くて。
ただただ驚きだけが現れた。
妻とは家同士のいわゆる戦略結婚というやつで結婚した。
俺のこの座の隣を狙って結婚されるよりも、同類っぽいやつと結婚したほうが良いだろうなんてお父様からの提案で始まった。
実に俺もこの意見には反対してない。
だって戦略結婚だとしても、確かな愛情があると思っていたから。
少なからず、俺は妻のことを愛していた。
その有り様が、これか。
よくわからない、ただの男、いふ……まろと出会ったのはその時だった。
お酒が苦手なくせしてなんだか酒が飲みたくなったからバーに行った。
柄にもないことをしたと自分でも思ってる。
まろとの出会いは俺の人生にとって吉なのか、将又凶なのか。
映画のように、ドラマのように
酒のせいか悲しみのせいか、一夜を共にし、そこから俺等の関係は始まった。
見え透いた嘘つき明らかに軽やかな足取りで家を出ていく。
ベランダから外を見れば妻は男とキスをして車に乗り込む。
…もう少し誤魔化したりはできないのかな笑
いくら浮気を受け入れた、まろと関係を持ったからといって悲しみが癒えることはない。
夜の考え事はどうしてもマイナスへと向かっていく。
もしかしたらまろだって色んな人との関係を持っていて、俺はただそのうちの一人にしか過ぎないんじゃないか。
まろが言ってくれるひと言一言は色んな人に言っている言葉なのではないか。
なんて、そんなことないって思ってみたって考えはまとまらずに加速していく。
指に張り付く銀色の輪は呪のようで、呪縛のようで
物体そのものを外しても呪縛は解けない。
脳に刻まれた記憶が知らないフリをしていつも通りに過した日々が余計に胸を締め付ける。
ふわり、甘い香りが脳を揺らす。
くらり、意識が溶けていくような感覚がする。
甘い、甘い、どこまでもあまい。
愛は、甘ければ甘いほど重たく、深く沈んでゆく。
ゆっくり、ゆっくり、沈んでゆく。
沈んでゆくたび、強さは薄れ、感覚は麻痺していく。
甘く、重く、暗く、どこまでも、どこまでも。
優しい目線が俺を捉える。
ひとつ、ふたつ、キスの雨が降ってくる。
それらを受け止めるたび、ひとつ、ふたつ、思いがつのる。
そのうち、堪えきれなくなった思いは涙になって溢れ出す。
うそつき、うそつき
好きだからだけじゃない、苦しいからでもない、悲しいからでもない。
違う、違う
俺はまろに何も見せてない。
俺はうそつきだ。
本当を見せれば、またまろも離れてしまうかもしれない。
孤独は嫌だ、一人は嫌だ。
人に興味なんてなかったのに、どうして。
ただ、ただ俺は怖いだけなんだ
まろもまた、嘘つきだ。
「ずっと一緒」だなんて言うくせに、朝になれば俺はまたひとりぼっち。
仕方ない、仕方ないとは分かっている。
それでも、どうしても、会いたくて、あいたくて
……朝は嫌い。
俺とまろを引き剥がそうとするから。
夜の闇に隠れて入り俺達を照らし出そうとするから
夜も嫌い。
まろの愛を受け取れば、もっと深く、戻れないほどに堕ちていくから。
俺には、まろからの愛がなければ生きていけないし生きる意味もない、なんて酷く思い知らされるから。
ぽろり、口からこぼれた言葉にまろの目が大きく開く。
驚いたような顔に一瞬、まろは切なげな表情を見せる。
まろの目は笑っている。
子供のような純粋な光を宿して、切なげに、悲しげに。
御曹司と一般人。
うそつき同士の俺達の関係は、変えることができない。
言えない言葉と気持ちを押し殺して。
寂しさだけを共有してどうにか埋め合わせようとして。
なんて愚かで、なんて、ばかばかしい。
それでも俺は、
溺れていたい、どんなに愚かな行為だとしても。
まろとふたりで、どこまでも溺れて、沈んで、堕ちていきたい。
そうしたらもう、何も怖くないから
こぼれ落ちた愛も心にたまり続ける切なさも
全部、ぜんぶうけいれて。
見えないすべてまで俺を愛して。
そんなワガママが分かりきっていたみたいに優しい顔をするまろは
イジワルで狡いやつだ。
俺が「うん」と答えることはないと分かりきっていながら
俺が一番望む幸せを、ちらつかせている。
嗚咽が溢れ出す口を塞がれる。
唇と唇とが繋がり、離れて、また触れ合う。
それが始まりの合図。
朝になると、まろは闇に身を隠すように帰っていく。
そしてまた、俺達の夜なんて誰も知らずに朝日は昇る。
夜になれば、その時だけ、恋人たちは出会う。
誰にも知られてはいけない。
知られては生きていくことはできない。
大きすぎるリスクを背負いながらも、恋人たちは愛し合う。
それは愛を求めるからか、性を満たすためか。
たとえどんな理由だったとしても、俺はまろを愛している。
そしてまろも、俺を愛している。
その事実だけが、暗闇の中のたった一つの光。
どんな日でも、夜はやってくる。
そして夜がくれば俺達は体を重ねる。
歪んで、曲がって、絡み合った愛。
たった一つ、手に入れた希望。
ベランダで二人、火照った体を冷ましながら夜の東京の街を見下ろす。
小さく息を吐くまろを見ると心臓がどくんどくんと音を立てる。
いやでもすきだ、なんて気持ちが溢れてくる。
たとえこの先、どんなに世界が変わろうとも。
どんなに世間が俺たちを許さなくても。
誓いのキスは俺たちには合わないほど甘酸っぱくて、照れくさくて。
うそつきたちの約束は夜の闇に溶けていって、それでもしっかり、俺たち2人の耳に残った。
キラリと輝くまろの左耳、同じように俺の右耳にも光があるのだろう。
誰にも秘密の2人の約束
決して破れることのない永遠の愛。
ずっとずっと、愛してる。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。