第86話

💙🩷「孤毒を癒やすエリクサー」
251
2026/05/29 03:42 更新



・桃×mob要素🙆🏻‍♀、🙇🏻‍♀
・曲パロ













4side






mobくん
旦那さんには言ってないの?
mobちゃん
いうわけないじゃない、あんなのに
mobくん
それじゃあ、浮気ってことだ笑



初めてその場に遭遇したとき、もう何の感情も抱かなかった。


腹立つとか悲しいとか怒りとかそんなの無くて。


ただただ驚きだけが現れた。


妻とは家同士のいわゆる戦略結婚というやつで結婚した。


俺のこの座の隣を狙って結婚されるよりも、同類っぽいやつと結婚したほうが良いだろうなんてお父様からの提案で始まった。


実に俺もこの意見には反対してない。


だって戦略結婚だとしても、確かな愛情があると思っていたから。


少なからず、俺は妻のことを愛していた。


その有り様が、これか。



l
ねぇお兄さん、浮かない顔してどないしたん?
N
……だれ


よくわからない、ただの男、いふ……まろと出会ったのはその時だった。


お酒が苦手なくせしてなんだか酒が飲みたくなったからバーに行った。


柄にもないことをしたと自分でも思ってる。


まろとの出会いは俺の人生にとって吉なのか、将又凶なのか。


映画のように、ドラマのように


酒のせいか悲しみのせいか、一夜を共にし、そこから俺等の関係は始まった。








mobちゃん
じゃぁ、今日も友達が待ってるから
N
帰りは朝方?
mobちゃん
えぇ、多分そうなると思うわ



見え透いた嘘つき明らかに軽やかな足取りで家を出ていく。


ベランダから外を見れば妻は男とキスをして車に乗り込む。


…もう少し誤魔化したりはできないのかな笑


いくら浮気を受け入れた、まろと関係を持ったからといって悲しみが癒えることはない。


夜の考え事はどうしてもマイナスへと向かっていく。


もしかしたらまろだって色んな人との関係を持っていて、俺はただそのうちの一人にしか過ぎないんじゃないか。


まろが言ってくれるひと言一言は色んな人に言っている言葉なのではないか。


なんて、そんなことないって思ってみたって考えはまとまらずに加速していく。



N
っねぇ、まろ
l
『なぁに?ないこ』
N
迎えに来てよ
l
『もう少し待ってて、すぐ行くわ』



指に張り付く銀色の輪は呪のようで、呪縛のようで


物体そのものを外しても呪縛は解けない。


脳に刻まれた記憶が知らないフリをしていつも通りに過した日々が余計に胸を締め付ける。



l
お迎えに上がりましたよ、ないこ様
N
まろ……


ふわり、甘い香りが脳を揺らす。


くらり、意識が溶けていくような感覚がする。

l
ないこ
N
う、ぁ…
l
あのヒトのことは忘れて
l
今は俺だけを見て


甘い、甘い、どこまでもあまい。


愛は、甘ければ甘いほど重たく、深く沈んでゆく。


ゆっくり、ゆっくり、沈んでゆく。


沈んでゆくたび、強さは薄れ、感覚は麻痺していく。


甘く、重く、暗く、どこまでも、どこまでも。


N
俺も、…すき
l
ふふ、かぁわいないこ


優しい目線が俺を捉える。


ひとつ、ふたつ、キスの雨が降ってくる。


それらを受け止めるたび、ひとつ、ふたつ、思いがつのる。


そのうち、堪えきれなくなった思いは涙になって溢れ出す。



N
ぅぐっ、ひぐっ、ゔぅぅ……
l
悲しいん?
N
ちがっ、いやっ……ぅうっ、わかんなッッ
l
ん、分かってるからな


うそつき、うそつき


好きだからだけじゃない、苦しいからでもない、悲しいからでもない。





違う、違う


俺はまろに何も見せてない。







俺はうそつきだ。


本当を見せれば、またまろも離れてしまうかもしれない。


孤独は嫌だ、一人は嫌だ。


人に興味なんてなかったのに、どうして。


ただ、ただ俺は怖いだけなんだ




N
いなくならないで、おねがいッッ……
l
…もちろん、俺はないことずっと一緒だから


まろもまた、嘘つきだ。


「ずっと一緒」だなんて言うくせに、朝になれば俺はまたひとりぼっち。


仕方ない、仕方ないとは分かっている。






それでも、どうしても、会いたくて、あいたくて






……朝は嫌い。


俺とまろを引き剥がそうとするから。


夜の闇に隠れて入り俺達を照らし出そうとするから



夜も嫌い。


まろの愛を受け取れば、もっと深く、戻れないほどに堕ちていくから。


俺には、まろからの愛がなければ生きていけないし生きる意味もない、なんて酷く思い知らされるから。


l
好きだよないこ
l
どんなにないこが俺を嫌っても
l
俺はどこまでも、どこまでも追いかけるから
N
っ、うそつき……


ぽろり、口からこぼれた言葉にまろの目が大きく開く。


驚いたような顔に一瞬、まろは切なげな表情を見せる。


l
そうかもな、俺は…
N
でもッッ……
N
今は、まろにおぼれていたいの
l
…ないこも、
l
うそつきなんやね



まろの目は笑っている。


子供のような純粋な光を宿して、切なげに、悲しげに。


御曹司と一般人。


うそつき同士の俺達の関係は、変えることができない。


言えない言葉と気持ちを押し殺して。


寂しさだけを共有してどうにか埋め合わせようとして。


なんて愚かで、なんて、ばかばかしい。


それでも俺は、


N
ちゅっ
l
ん…珍しいやんか、ないこからなんて


溺れていたい、どんなに愚かな行為だとしても。


まろとふたりで、どこまでも溺れて、沈んで、堕ちていきたい。


そうしたらもう、何も怖くないから


N
すき、すき……


こぼれ落ちた愛も心にたまり続ける切なさも


全部、ぜんぶうけいれて。


見えないすべてまで俺を愛して。






そんなワガママが分かりきっていたみたいに優しい顔をするまろは
l
俺と、逃げてみる?
l
ぜんぜーんぶ投げ出して、捨てちゃって


イジワルで狡いやつだ。


俺が「うん」と答えることはないと分かりきっていながら
俺が一番望む幸せを、ちらつかせている。



N
っ、だめなんだよ……
l
うん、知ってる

嗚咽が溢れ出す口を塞がれる。


唇と唇とが繋がり、離れて、また触れ合う。


それが始まりの合図。


l
もうすぐ朝やから
N
うん、また連絡する
l
俺はいつでも大丈夫やから
l
愛してんでないこ
N
俺も、あいしてる


朝になると、まろは闇に身を隠すように帰っていく。


そしてまた、俺達の夜なんて誰も知らずに朝日は昇る。


夜になれば、その時だけ、恋人たちは出会う。


誰にも知られてはいけない。


知られては生きていくことはできない。


大きすぎるリスクを背負いながらも、恋人たちは愛し合う。


それは愛を求めるからか、性を満たすためか。


mobちゃん
ただいま〜
N
おかえり、楽しかった?
mobちゃん
えぇ、とっても


たとえどんな理由だったとしても、俺はまろを愛している。


そしてまろも、俺を愛している。


その事実だけが、暗闇の中のたった一つの光。


N
『まろ、迎えに来て』
l
『りょうかい』
N
……ふぅ、


どんな日でも、夜はやってくる。


そして夜がくれば俺達は体を重ねる。


歪んで、曲がって、絡み合った愛。


たった一つ、手に入れた希望。


l
いい夜やなぁ、ないこ
N
うん、月が綺麗だよね
l
月はずっとずっと前から綺麗やで


ベランダで二人、火照った体を冷ましながら夜の東京の街を見下ろす。


小さく息を吐くまろを見ると心臓がどくんどくんと音を立てる。


いやでもすきだ、なんて気持ちが溢れてくる。


たとえこの先、どんなに世界が変わろうとも。


どんなに世間が俺たちを許さなくても。



N
愛してるよ、まろ
l
……ほんと、俺等最悪やな笑
N
…そうかも
l
でも、俺も、ないこのことを愛してるよ
l
堕ちるときも2人でずっと一緒やから
N
ふふっ、約束ね?
l
もちろん


誓いのキスは俺たちには合わないほど甘酸っぱくて、照れくさくて。


うそつきたちの約束は夜の闇に溶けていって、それでもしっかり、俺たち2人の耳に残った。


キラリと輝くまろの左耳、同じように俺の右耳にも光があるのだろう。





誰にも秘密の2人の約束





決して破れることのない永遠の愛。


ずっとずっと、愛してる。















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