気づいた時にはもうすでに遅かった……
みんなの叫び声を遠くに聞きながら私の意識は
すぅっと闇の中に消えた。
。
やっぱり誘拐されましたぁ。あはは。
しかも出発する前に準備してたらぁー?
勝手に部屋に入られてぇー?
……あいつら変態かよぉぉぉ!
しかも拘束がキツい……。
この間よりも身動きがとれないようになってる。
なんか拘束技術上がってない?!
まぁ、不幸中の幸いと言うべきか。
いざとなったら隠してたナイフは取れる。
さーて、どう動くべきか。
敵居ないから今すぐ逃げていいかなぁ?
拘束しといて見張らないとかあいつら間抜けなの?
いや敵が私に手出し出来ないなら
今はよく分からないここから逃げるより
ここにいて情報を掴んだ方が安全なのか?
ガタンッ!
……うおっ!びっくりしたぁ。
何が起きたのか分からないけど
何かが落ちた、のか?
「ごきげんよう。
1人じゃ寂しいだろうからお仲間よ。」
わぁー。誘拐仲間か増えちゃったー。嬉しいー。
ついでに敵さんのお出ましだー。きゃー。
……って、な訳あるかい!!
……喋りたくても喋れないんだよな。
誘拐されたのって誰だろう。
これで小さい子供とかだったらさすがに
ここから一緒に連れて逃げるけど。
ニヤけてるドMおじさんとかだったら
どうするべき……?
スルリ
目隠し外された。
うーん、相変わらず殺風景過ぎて
視覚あってもなくても変わらないな。
誘拐された人は…………
って!
。
え、嘘でしょ……?は?
なんで、ここにいる訳?
……どうして、咲楽が?!
何もされてない、つまり
時間がそんなに経ってない誘拐されたてか。
「どうして、って顔してるわね。」
あー、はい。そうだよ。
なんで?咲楽を攫うメリットは?
「夜野宮家は鍵だからよ。」
カギ?どういうこと?頭でも壊れちゃった?
「だから、邪魔だったから
あの日皆殺しにしたはずなのに、ねぇ?」
「あなたなら覚えてるんじゃなくて?
一族で行われる祭り……確か、夜空祭り。」
「その日、私が事故と称して
夜野宮を皆殺しにしたから。」
「死因は祭りに使うはずの火による火事?
いいえ、違うわ。
私が殺してそれを燃やしたのよ。」
「鍵だったから邪魔だったのよ。
先に誰かに勘づかれて閉まったら
私の計画が水の泡になるもの。」
「あら、あの場に桜色の髪をした
子供はいなかったわよ。だからじゃなくて?」
「そう。まぁ今となってはどうでもいいわ。
1人生き残っていたなんて運がいい!
これで扉が予定よりも早く開くわ!」
……あぁ、ダメだ。
咲楽の涙なんて見なくても
知り合いに夜野宮がいなくても。
心底腹立つな、こいつ。
人のクズじゃん。
今すぐナイフで刺してやろうか。
いやまず拘束を解くのが先か。
「あぁ、それと
あなたがナイフを握った瞬間
この子の命はないわよ。」
チッ、取られてないのはわざと……
選択肢を増やして私を動かさないため。
だけど私には選択肢なし。
みんなが来るのを待つしかない、か。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!