第3話

第三話「壊れた幸せ」
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2020/12/25 10:01
急げ!急げ!急げ!
私のお父さん、怜央の所のおばさん。
咲の所のおじちゃん。光汰の所のおばあちゃん。
みんなを助けたい。
いや、助けるんだ!
私達はひたすらに走った。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
向こうに逃げて!!
天井に穴が空いたの!
糸宮 咲
糸宮 咲
もうこの場所は危険です!
西へ逃げてください!
錐妖 怜央
錐妖 怜央
西へ行けじじいばばあ!
ここにいたら死ぬぞ!
早崎 光汰
早崎 光汰
西に逃げろ!
ここは危険だ!
人々に声掛けをしながら
避難を助けて北へ向かっていく。
西に行けば酸素のあって
兵士のいる安全なシェルターがある
全員が助かる!

もう少しで私達の住む地区「リアロ地区」に着く。
あと少しで、みんなが助かる!
糸宮 咲
糸宮 咲
……まずいわね。
錐妖 怜央
錐妖 怜央
……もうここまで来てるのか。
水がゴボゴボと音を立てて私たちに
迫ってくる。
被害を受けたのは北。
水はそのまま東へ流れてここ、南に来た

ってことよね。
やばい、もう少しで飲み込まれる!
早く助けなきゃ!
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
お父さんっ!
ようやく見つけた!
早崎 光汰
早崎 光汰
母さん!
糸宮 咲
糸宮 咲
お父さん!
錐妖 怜央
錐妖 怜央
……ババア。
良かったぁ……
みんなひとまず無事だ!
シェルターはそう遠くない!
このままいけば助かる!
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
よっし!
シェルター……に……
早崎 光汰
早崎 光汰
……は?
魔族
う……あ……あああニマァ
早崎 光汰
早崎 光汰
なん…でっ?
糸宮 咲
糸宮 咲
?!?!


今はそれどころじゃない!
__みんな、逃げよう!
私は咲の手に引かれて
遅れて走り出す。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
待っ、お父さんたちが!
糸宮 咲
糸宮 咲
__仕方ないでしょ!
早崎 光汰
早崎 光汰
そんなの、ありかよっ!
糸宮 咲
糸宮 咲
だって!
どうすればいいのよ!
錐妖 怜央
錐妖 怜央
適切だ……仕方のない、犠牲だ。
下を向いた怜央。
いつもの平坦な迷いのない口調じゃなくて
子供の頃みたいに少し迷って怯えたような口調だった。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
お父さん!!!!
海鳴 勝俊
いいか! 
夏穂、お前は「それ」と生きろ。
決して!決して、___な!
その言葉と共に飛んできた四角いカード。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
そ、そんな!
お父さん!!
糸宮 咲
糸宮 咲
振り返らないで!
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
ッ……
錐妖 怜央
錐妖 怜央
ババア……ッ
怜央の声でハッと我に返る。
辛いのは私だけじゃない。
ここで止まっていい権利はない。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
あり、がとう、咲。
糸宮 咲
糸宮 咲
……いいのよ。
私は私の為に走っただけ、だから。ニコッ
いつもの綺麗な笑みじゃなくて
片方が引きつった歪な笑み。
私は親友に、
「見捨てさせる」という一番辛い役をさせてしまった……。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
ほんと、ごめん。
早崎 光汰
早崎 光汰
おいおい、どうするよあれ。
振り返ると走り迫る魔族がいた。
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
海下まで降りれば追ってこれない!
私は咲の手を放し海下センター街入口を指した。
海下には兵士がいるはず!
そこに行けば助かる!
錐妖 怜央
錐妖 怜央
なるほど。
糸宮 咲
糸宮 咲
じゃあ
早崎 光汰
早崎 光汰
各自
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
ご無事で!
ダンッ!
一斉に4方向へ散らばった私達。
4方向へ散らばって逃げれば
生存率が上がる!
さぁ、気持ち悪い化け物!
私に喰らいつけ。
何がなんでも
海鳴 夏穂
海鳴 夏穂
逃げ切ってやるんだから!

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