急げ!急げ!急げ!
私のお父さん、怜央の所のおばさん。
咲の所のおじちゃん。光汰の所のおばあちゃん。
みんなを助けたい。
いや、助けるんだ!
私達はひたすらに走った。
人々に声掛けをしながら
避難を助けて北へ向かっていく。
西に行けば酸素のあって
兵士のいる安全なシェルターがある
全員が助かる!
もう少しで私達の住む地区「リアロ地区」に着く。
あと少しで、みんなが助かる!
水がゴボゴボと音を立てて私たちに
迫ってくる。
被害を受けたのは北。
水はそのまま東へ流れてここ、南に来た
ってことよね。
やばい、もう少しで飲み込まれる!
早く助けなきゃ!
。
ようやく見つけた!
良かったぁ……
みんなひとまず無事だ!
シェルターはそう遠くない!
このままいけば助かる!
。
私は咲の手に引かれて
遅れて走り出す。
下を向いた怜央。
いつもの平坦な迷いのない口調じゃなくて
子供の頃みたいに少し迷って怯えたような口調だった。
その言葉と共に飛んできた四角いカード。
怜央の声でハッと我に返る。
辛いのは私だけじゃない。
ここで止まっていい権利はない。
いつもの綺麗な笑みじゃなくて
片方が引きつった歪な笑み。
私は親友に、
「見捨てさせる」という一番辛い役をさせてしまった……。
振り返ると走り迫る魔族がいた。
私は咲の手を放し海下センター街入口を指した。
海下には兵士がいるはず!
そこに行けば助かる!
ダンッ!
一斉に4方向へ散らばった私達。
4方向へ散らばって逃げれば
生存率が上がる!
さぁ、気持ち悪い化け物!
私に喰らいつけ。
何がなんでも
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。