第66話

番外編「夏のアイス」
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2021/05/13 07:10
「海なのに!暑すぎる!!」
「口に出すなよ。余計に暑くなるだろ。」
「じゃあ、寒いって言ったら寒くならないと
割に合わないわよ。寒い寒い。」
「マジレス……暑いものはしょうがないだろ。」
あれは、暑過ぎるほどに晴れた夏の日。
「しょうがなくない!しょうがなくない!!」
「2回も言うなよ。もう声だけで暑苦しい。」
「ほんと、この暑さどうなってるのよ……」
「……まず、暑いなら離れれば良くないか?」
バカみたいに4人で集まって。
「「「え?」」」
「無自覚か?」
「いやぁー、つい癖で寄っちゃってた。」
「通りで暑いと。」
「離れてもそんなに変わらないわね。」
暑さの中で狂ったように笑いあって。
「私は!アイスを!所望する!」
「あー、口がアイスの味になってきた。」
「ソーダ味がいいわ。」
何故かアイスを猛烈に欲しがって。
「買いに行くか?」
「え、動いたら暑いじゃん。」
「よし、ジャン負けが行こうぜ。」
「じゃあ、負け2人ね。」
「じゃーんけんぽんっ!」
チョキ、グー、グー、そしてチョキが出て。
面白いぐらいにはっきりと夏穂と俺が負けて。
「おっしゃ、俺チョコね。」
「私はソーダでよろしく頼むわ。」
「うっそ……あ、私はコーラで。」
「夏穂も負けだから行かなきゃだぞ。」
「ちぇっ。流石に騙せないか。行こ行こ。」
渋々重い腰を上げて駄菓子屋に向かった。
「ねぇー、怜央。」
「なんだ?」
「ムカついてきたからお求めの味は買ってやらない
つもりなんだけど。」
「文句なしのジャンケンだっただろう。」
「いや、それはそうなんだけどさー。」
急に機嫌を損ねた夏穂が謎の提案をしてきて。
「やっぱりメロン味とレモン味買ってやろ。」
「しかもあいつらの嫌いな味……」
「へへ。あ、おばちゃん!
メロン味とレモン味とイチゴ味と……
怜央はどうする?」
「じゃあ、梨味で。」
最初の予定とは全然違うアイスを買って。
「出た。怜央の謎チョイス。」
「そんなに謎じゃないだろ。」
「……次は絶っっ対あいつらにいかせようね。」
「ジャンケンに勝てればな。」
「すぐそういうこと言う。」
……ジャンケンなんて小さなものじゃなくて
もっと大きな勝敗でその約束は叶わなかったけど。
もう二度とアイスは買ってきてもらえないけど。
「でも、まぁ負けても皆と馬鹿なこと
出来れば私はそれでいいけどね。」
それでも、その願いは叶っただろうか。
団長という立場にありながら、
未だに子供みたいに戦いまくって事務はサボる
そんな夏穂のあの夏の小さな夢が叶ってるといい。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ錐妖怜央の願いfin.

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