第72話

番外編「かくれんぼ」
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2021/07/29 11:24
「あ、副主任。また“あれ”なんですよ。」
係員の話につい口から盛大に本音が盛れてしまう。
「はぁー、めんどくさい。」
誰だって、こんなことが何回も起きれば嫌になる。
馬鹿のかくれんぼに付き合うなんて誰が好きでやるんだ。
本当に性懲りも無くあの馬鹿は……。
もう今ではすっかり日常茶飯事になってしまった
戦兵団実務課主任であり僕の同期であり馬鹿である
双葉のかくれんぼという名のサボり事件の解決、
これが今回の任務である。
馬鹿なくせに悪知恵だけは働くらしく
未だ僕以外誰も見つけられたことがないため
いつもこの事件の担当は僕になる。
もう、本当に1回こっぴどく叱りたい。
隠れてる場場所は大体分かっているので
あとは気合いで1つずつ潰していく作業だけ。
「失礼しまーす。」
今はもう使われてないらしく夏穂の妥協もあり
ボロのままになっている旧・用具室の扉を開ける。
本当にあの団長とうちの馬鹿は、何回もサボって
頭の中にダイレクトに責任を叩きつけてやりたい。
部屋の中は何も無いからか案外広くて埃っぽい、
はずだったのに何故か綺麗になっている。
埃まみれの棚もピカピカになっていて
机やイスも綺麗に並べられていて何故か
雑貨までおいである。何より空気が綺麗だ。
そして1呼吸置いて深い瞬きをして
中央の大きな机をもう一度しっかりと見る。
満足そうに机にうつ伏せて寝ている馬鹿、
もとい双葉がいた。
……なるほど。避難場所であるこの部屋を
綺麗にしようとしたんだろうな。そこまでは分かる。
「仕事放り出しといて寝るとはいい度胸ですねー。」
一言で言えば、腹が立つ。
二言で言えば、なんなんだ。腹が立つ。
というか、本当にぐっすり寝てるんだな。
さっきから揺すっても叩いてもピクリともしない。
はぁー、駄目だな。こりゃ。
腹立たしいけども何となく経験から察した。
これは絶対に1時間寝るタイプの寝方だ。
諦めて双葉の隣にあったイスを引いて座る。
気持ちよさそうに寝ている双葉の無駄に柔らかい頬
を思いっきり伸ばしては戻す、を繰り返す。
あー、ダメだ。ただ頬が緩んでるだけだ。
これでもダメか。なんなんだ睡眠欲の塊なのか。
というか、こうして見ると
白い肌に、薄い紅の唇、青の大きな瞳、
さらりとかかっている黒髪
双葉って、もしかして、案外、意外と、か
って、え、ちょっと待て。青の大きな瞳……。
「え、っと。何してんの、お前?」
「起きてたんですかぁ?!」
「うん、ちょっと前にだけど。おはよう。」
「おはようございます、じゃなくてですね!」
「……んんー?って!」
「自分の罪をようやく自覚しましたか?」
「ゴメンナサイデシタァァァ!」
「ちょっと、待ちやがれください!」
危なかったけど、まだ絶対にそんなこと言ってやらない。
サボった自分をせいぜい恨めばいい。
                                      茶谷悠里の隠し事.

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