助けてください、神様。
そう、強く願う声がわたしをひきよせる。
洒落た街の一角の交差点。見るに耐えない情景が私の目の前にはあった。桜並木に続く道路の途中で深くめり込んだ青色の車とその倍以上はあるであろつ前方が歪んだトラック。強く声の聞こえる乗用車の方へ降り、近づいた。
「お願いだから……彼女だけでも……」
子を宿している女性は彼の腕のなかで意識をとばしていた。私は地に蹲るように翼を伸ばすように魂をこめて祈る。神様が私を存在させてくれているように、この二人を、三人を救ってください、と。瞬時に奇跡が訪れる訳ではない。水から陸へあがるときのような体の重みで目が覚める。
夢のような。
笑みと涙をこぼす幸せな光景がそこにある。
これが私の一番新鮮な記憶になるのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。