御子柴杏華side
私は八雲村という小さな村に生まれた。
父と母と私で貧しいながらも幸せな生活を送っていた。
そんな私には、幼なじみがいた。
"久遠蒼逸"
私の1番のライバルで、
1番、大好きな人だ。
蒼逸は幼くして鬼に父を殺され、母と弟2人で生活していた。
長男だったということもあり、正義感が強く、弱いものを放っておけない。
優しい性格だった。
その日、私達は綺麗な夕日の見える山の頂上を目指して、山登りをしていた。
14歳、少し肌寒い、秋の事だった。
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ようやく頂上に着いた。
この山の頂上から、蒼逸と見る夕日が、
1番綺麗だった。
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私達は夕日を見終わり、山を下山していた。
私達が下山し終わる頃には、もう辺りは暗くなっていた。
走って家に帰る。
家に入った私は衝撃の光景を目の当たりにした。
家の中はそこかしこに血溜まりがあり、引っ掻いたような跡がそこら中にあって、ボロボロになっていた。
部屋の真ん中には、私の大好きなお父さんとお母さんが血だらけで力なく横たわっていた。
何度声をかけても、
何度揺さぶっても、、、
2人が起きることはなかった。
バンッ!!!!🚪
ギュッ!!
私はいっぱい泣いた。
体中の水分が無くなるんじゃないかってくらい泣いた。
そんな私を蒼逸はずっと抱きしめてくれていた。
蒼逸も泣きたいはずなのに、、、
ずっと、涙を堪えて私の背中をさすってくれた。
私達は一瞬で愛する家族を失った。
気味の悪いくらい大きくて綺麗な、、、
満月の夜の日のことだった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!