アオイside
私は、妖しく光る満月が照らす夜道に、
天ぷらを持って伊之助さんの屋敷に向かっていた
あなたさんが居なくなって、
少し元気がなかったからどうにかして励ましたかった
スッ、、、
軽く握りこぶしを作り、屋敷の門を叩こうとすると、
ガガッ、、、(門の開く音)
_______________
屋敷の縁側に面した8畳ほどの畳部屋に通された。
そう言って伊之助さんの前に
天ぷらの入った籠を差し出した、、、
伊之助さんは天ぷらを見て動かなくなってしまった。
伊之助さん、天ぷら食べるの久しぶりなんだ、
天ぷらを食べ終わり、
月を見ようと二人で縁側に座った。
ふと横を見ると、
綺麗な月の光に照らされた伊之助さんの目は、
なにか覚悟を決めたような、そんな目をしていた。
すると、
妙に緊張していた私は声が裏返ってしまった。
嫌だ。
伊之助さんが死んでしまったら、、、私っ、、、
「アオイ?」
会えなくなるなんて嫌だ。
あの笑顔を見られなくなるなんて、嫌だ。
伊之助さんに肩を掴まれて我に返った。
ポロポロッ、、、
生暖かいものが頬をつたる
私、、、泣いてる、?
拭っても拭ってもとめどなく流れてくる、、、
そう言って誤魔化してみるけど、
やっぱり涙は止まらない。
ギュッ、、、
私は気づくと伊之助さんの腕の中にいた。
安心した私は、伊之助さんにすがりついて泣いた。
いつも通り、ニカッと笑う伊之助さんにほっとした
ワシワシと頭を撫でられた。
どうか、
伊之助さんやみんなが生きて帰ってきますように。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!