1人で掃除をしていたら、
部屋の隅に積まれたDVDの山を見つけた。
今日は帰りが遅いらしい。
久しぶりに見ようかな。
リモコンを握りしめて、気づけば潤くんのソロまで早送りしていた。
「かっこいいな…」
画面に映るたくさんのペンライト。
あなたの存在をとても遠くに感じた。
『え、何、恥ずかしいんだけど笑』
「え!あ!潤くん!おかえり!」
『ふふっ、めっちゃぼーっとしてたよ笑』
「そ、そうかな、へへっ…あれ、
今日遅くなるって…」
『あー、撮影巻いたんだよね』
自分が映ったテレビの画面に気づくと、
『ほら、本物ここにいるんだから笑』
そう言ってテレビ画面を変えられた。
少し照れくさそうに笑う君の横顔は、
画面越しよりはるかに愛おしい。
なんでだろう、目線を合わせられない。
『なあ、』
腰をかがめて私の顔を覗きこむ。
『どした?元気ない?』
「え、えーっと…いや…」
大丈夫、と言おうとしたその時、
ふいにやさしく抱きしめられた。
大人っぽい香りのするニット。
ごつごつして男らしい手。
『分かった。分かったよ。』
「え…?」
『俺はお前だけのもんだから。本気で離したくないって思うのは、世界中でお前だけだよ?』
画面からでてきたスーパーアイドルは、何も言わなくても、私の不安を分かってくれた。
「うん。ありがとう…」
『泣くなよ笑』
「だって…松本潤がいるんだもん、ここに。」
『うん、いるよ。ずっといるよ?
あなたの隣に。』
そう言った彼の唇が私の唇に重なる。
『大好きだよ』
気づいたように台所へ向かう君。
『晩飯まだでしょ?
ドラマで作った料理のレシピ貰ったから、
作るね』
「ほんと!?ありがとう!」
・
きっと今私の目の前にある景色は、
世界で1番幸せな景色。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。