LYNNLYNN side
イチェンヒョンの『特別』になれた。あの優しい笑顔が戻ってきた。
ヒョンが合脱式の後、僕を寒い廊下まで連れて行って、告白してくれた。
ヒョンは最初僕のアピールを嫌がってたけど、最後には僕を好きだと思ってくれてたなんて、諦めないでよかったなあ。
あの時騒いじゃったけど、おでこにキスされたのは嬉しかったんだ。あ、ヒョンが僕の頭におでこをぶつけたのは、ちょっとダサかった。
あの告白の後から、ヒョンは僕にめちゃくちゃ愛を伝えてくれるようになった。付き合う前の僕のアピールをスルーしたのを気にしているのか?
「リンリン〜キスしていい?」
「ほっぺならいいですよー」
ちょうど今も僕の隣にいる。ヒョンのベッドにふたりで並んで座って。
僕達はあの後、また同じチームになって、同じ部屋にもなった。しかも2人部屋。メンバー達は俺達が付き合ってることを知らないが、なぜか気を遣われて2人にしてくれた。(仲直りしたと思われてるから……たぶん。)
「唇はダメなの?」
「今はダメです、韓国語勉強中。」
「えーい、そう言ってさっきからページがいっこも進んでませんけどー」
「じっくり読んでるんですよお」
ヒョンの言う通り、ページは最初から全く進んでない。ヒョンが隣にいると、緊張しちゃうんだよ。前は全然そんなことなかったのに。
「一瞬だけ!一瞬だから!」
「どんだけしたいんですか…」
いつもはしっかりしているヒョンが、僕の前だけこんなにしつこく甘えてくる。実を言うとたまにめんどくさいときもある。でもヒョンのこんな姿を見れるのは僕だけだと思うと、僕本当にヒョンの恋人になったんだ、って実感して口角が自然と上がってしまう。
「はい、どうぞ」
ヒョンの方を向いて目を瞑る。これで一瞬でキスしなかったらすぐに戻ってやろう。
…と思ったけど、頬をがしっと掴まれて顔を動かせないように固定させられた。
ヒョンの綺麗な顔がゆっくりと近づいてくる。僕は思わず目を逸らしてしまった。
「リンリンって目合わせようとするとすぐ逸らすよね〜」
「だってヒョンの顔綺麗なんですもん」
「もお〜」とヒョンが崩れた。その隙に僕は顔を元の位置に戻す。
「あ、戻るなよ〜。もう何も言わないから、もっかいこっち向いて!」
「恥ずかしいヒョンだなあ、もうヤです。」
付き合う前まではリンリンの方が俺にベタベタだったのに〜、と文句を言うヒョン。それは恥ずかしい思い出を思い出すからやめてくれ。
ヒョンが急に静かになったかと思うと、ベッドから降りて跪き、僕の韓国語の本を取り上げた。
「あ、ヒョン!何するんですか!僕真剣に読んでたのに!」
「リンリン、今はこっち。」
ヒョンの目に吸い寄せられるように動けなくなってしまう。
『いつでも韓国語の勉強をしなさい』とヒョンにしこたま言われていたのに、今は俺に構って、って自分勝手すぎるだろ!
ヒョンが僕の手をとって指先にキスを落とす。
そのまま甲、手首、首筋…とどんどん上に迫ってくる。
「…恥ずかしい」
なんだかヒョンの仕草がくすぐったくなって、思わず声を洩らした。
その瞬間、首筋にちくり、と痛みが走った。
「っ!なに、?!」
「あ、ごめん、つけちゃった」
つけちゃったって何?と思うと、ヒョンがいそいそと近くにあった鏡を持ってきて、僕の首が見えるように、嬉しそうに鏡を向けた。
「……あ!?」
「なんか可愛くてつい。」
ヒョンの肩をばしんと1回だけ強く叩いた。ヒョンは肩を抑えて痛がってるけど、顔はすごく嬉しそうだ。
「なんでつけるんですか?!しかも見えそうで見えない…いや、見えなさそうで見える位置に…」
仮にも僕達練習生だけど?これが見えちゃって放送されたらどうするつもりなんだ。
僕にとっては一大事なのに、ヒョンはくすくすと笑っている。
「大丈夫大丈夫、俺がそれ、見えない服貸すよ」
「そんなのヒョン持ってましたっけ?なかったらどうなるかわかってますよね」
僕が睨みつけると、ヒョンが「おーこわい 笑」と言いながらスーツケースの中を探しだした。
「んー、これでどうにかなるかなあ」
一応隠せそうなのは見つけたけど、ヒョンは俺に渡してくれない。
僕は一生懸命腕を伸ばして取ろうとするけれど、ヒョンが服を遠くへと離したり、フェイントをかけたりして僕を遊んでいる。この…僕より背がちっちゃいアジョシが。
「ちょっと、なんで渡してくれないんですかっ、ヒョンは僕がファンの方に、女の影がどーたらこーたらって言われてもいいんですか?」
「それはヤダけど〜…そんときは『これつけたのイチェンヒョンです』って言えばいいじゃん」
「ダメに決まってるでしょ!?」
ヒョンが笑って、服を遠くへ投げ飛ばし、僕の腕を掴む。
「わ、」
「服貸すから、もういっこつけてもいい?」
「…見えない位置にしてくださいね」
ヒョンが嬉しそうに首筋に近づいて、赤いしるしをつけた。
ファイナルの後、僕達はデビューできなかった。だけど、この番組にヒョンと出られたことには感謝している。
その後ヒョンが、僕と同じグループでデビューしたいと騒ぎ出したのは、また別のお話。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!