意識は深く暗い闇の中をさまよった。
何処までも何処までも続くかに思えたその闇は、
突如薄くなってゆき、途切れた。
意識が引き上げられる。
目を開けると見覚えのある天井が見えた。
蝶屋敷だ。
私は死ぬ事ができなかったのだろう。
私は諦めて身体を起こし、周囲を見渡した。
あの日から一体何日経ったのだろう。
生き延びてしまったのなら、
またどうにかして自殺しなければならないな。
そんな事を思い、ぼーっとしていると誰かが部屋へ
入ってきた。
蝶の羽を思わせる羽織、小柄な体躯から察するに、
蟲柱の胡蝶しのぶだろう。
蟲柱は私を見て、少し目を見開いた。
私は蟲柱の想定よりも早く目覚めたのだろうか。
その後、すぐに笑顔に戻り口を開いた。
私は気の無い返事をする。
鬼殺隊の医療を一手に負う彼女にとって、
任務による負傷でも無いのにベッドを埋め、
無駄な仕事を増やした私は、
迷惑以外の何者でも無いだろう。
きっと叱られる。
そう思うと気の無い返事しかできなかった。
だが、次の彼女の発言は
私の想像の斜め上をゆくものだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。