第2話

3人の少年
98
2020/03/11 09:53
今日もうるさいくらいの声をあげて、目覚まし時計が朝の7時を伝える。
涼太
涼太
ん、んん…
やっとのことで起き上がって、目覚ましを止めにいく。
今日で、地球から色がなくなって1週間。
この白い世界に慣れた者は恐らくいないだろう。
東雲涼太も、その1人。
涼太
涼太
これだけ濃い影が出来てるってことは、今日は晴れだな
全てのものが白いため、影を見て形を判別する他無い。
影はきちんと黒く見えることから、人類の目がおかしくなったわけではなさそうだった。

とはいえ、過ごしずらさはもちろんあった。
いくら住み慣れていても、家具にぶつかることもしばしばで、おかげで小さな生傷が絶えない。
世間では超常現象だなんだと騒がれているが、涼太にとっては、原因よりもそっちの方が重大だった。
翔琉
翔琉
おーい、りょーたー
顔を洗い、服を着替えて朝ご飯を済ませたところで、タイミング良く、外から聞き慣れた声がとんでくる。
涼太
涼太
おーっす
涼太
涼太
どした?
窓を開けて応じる。
翔琉と、その隣には司もいた。
翔琉
翔琉
降りてこいよ涼太!面白いことしよーぜ!
司
ねぇやっぱりやめようよ!危ないよ?さっきだって、危うく轢かれるところだったじゃない!
真っ白な世界では、信号機は意味を為していなかった。
大きな道路では警察が交通整備をしているのだが、小さな道路1本1本に警察官を配備できるほど、人手は足りていないらしい。


1人で突っ走る翔琉を止めようと必死に後を追い、挙げ句車に轢かれそうになるとは。

言い返す司の気持ちがよく分かる。
翔琉
翔琉
おっきな道路渡れば良いだろ
司
こっちの方が近いからって脇道通ったの誰さ!?
大胆で豪快すぎる翔琉と、反対に慎重派の司。
いつもの言い争いが始まろうとしていた。
涼太
涼太
あーもう、人ん家の前で喧嘩すんな
涼太
涼太
てか、翔琉はなにしたいのよ
訊いた瞬間、しまった、と思った。

が、もう遅い。
翔琉
翔琉
決まってんだろ
にやりとする翔琉のこの顔には、見覚えがあった。

嫌な予感しかしない。

司も同じことを思ったらしく、隣でげんなりとしていた。
翔琉
翔琉
色が無くなった原因を、俺達で突き止めるんだよ
こうなったらもう、誰にも翔琉は止められない。例え俺達が断っても、1人でも行くと言うだろう。

翔琉1人でなんか、危険すぎて行かせられない。こいつには常に、制止役が必要だった。

「「はぁ…」」

この先を考えて、司とため息でハモる。

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