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第1話

電車
14
2018/11/23 03:04
「姉ちゃん、おはよ。今日も寒いな。」


僕の日課。毎朝姉ちゃんに話しかけること。


きっと姉ちゃん寂しいから。


...僕も寂しいから。


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カーテンから射し込む光で僕は目を覚ました。

4月6日

いつも通り歯磨いて顔洗って。

いつも通り朝ごはん食べて。

いつも通り制服に着替えて。

「先行っとくねー」

いつもと違って姉ちゃんは先に家を出た。

「行ってらっしゃーい!入学式頑張ってね!」

いつもより笑顔で。

「ありがと、頑張るね!」

いつもの笑顔じゃない。

(緊張...してるのかな。)

(まあ、姉ちゃん人見知りだからなぁ...)

でも僕の前であんなにぎこちない笑顔を見せたのは初めてだった。

(考えすぎかな...)

姉ちゃんは家から結構遠い高校受験した。

そして、電車通学になった。

もう姉ちゃんと一緒に学校に行くこともなくなるのかなと考えるとなんか寂しい。

僕も今日は始業式だ。

今年から中学2年生。

中学校の生活にもなれて、毎日何も無い日々を過ごしていた。

初日から遅れてはいけないなので、今日は早めに家を出ることにした。
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それは、学校についてすぐのことだった。

職員室に呼び出された。なにか悪い事をした覚えもなく少し怖いなぁと思いながら職員室にへ向かった。

すると、目の前に母さんがいた。

「なんで母さんが学校にいr「いいから。」

そう1言いって僕は腕をぐいっと引っ張られた。

「なに?なんかあったの?」

何度聞いても答えてくれない。

車に乗せられ流れる景色をぼんやりと眺めていたら今日起きたことを思い出した。

姉ちゃんのあのぎこちない笑顔。

まさか...

でもそんなこと姉ちゃんがするわけない。

絶対、絶対しない。姉ちゃんがあんなこと...

気づけば病院にいた。

うちのじいちゃんとばあちゃんはもう先に亡くなっている。

そして父さんも交通事故で亡くなってしまった。

なら可能性としてあり得るのは...

「母さん、僕行きたくない。」

そんなの許されるはずもなく母さんはさっきみたいにまた腕をぐっと引っ張った。

「行きたくないっ!!!」
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僕は目を覚ました。

毎年この日は同じ夢を見る。

そっか、今日は姉ちゃんの命日か...

「姉ちゃん、なんであの時気づいてあげれなかったのかな...」

「ごめんな...辛かったよな...」

「忘れないよ、絶対。」
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4月6日

姉ちゃん、

あれから2年経ちましたね。

今日から姉ちゃんが行くはずだった高校に行きます。

でも僕は姉ちゃんを殺した電車の音がどうしても怖いので、車で送ってもらうことにしました。

母さんに迷惑かける分、たくさん勉強してきます。

そして、姉ちゃんの分もしっかり勉強してきます。

いつかは電車に乗れるようになりたいなぁなんて思いながら

とりあえず、今は今をしっかり見てたまーに姉ちゃんと一緒に遊んだ時のこと思い出しながら頑張ろうと思います(笑)

ずっとそばに居るよ。

ずっとそばに居てね。



『行ってきます、姉ちゃん。』

いつもより笑顔で。

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