柚子side
葉織さんは最初から誰も寄せ付けない雰囲気があった、でもそれは無意識じゃなくて自分から出しているものだった
でも、それは葉織さんにとって自分を守るためでもあるのかもしれない。それでもあそこまで徹底するのは間違っている
せっかく葉織さんのことを想ってくれている人が贈ってくれたものなのに捨てるのは間違っている。最初から捨てるならそんな気を醸し出さずに断ればいいのに…それで救われるのは葉織さんだけだ
ゆ「でも、人でなしは言い過ぎたかな……」
ま「あっ!葉織の横にいたやつ!!」
ゆ「え?」
ま「なんだっけ……「ゆーくん」?だっけ」
ゆ「あっ、真央さん…でした?」
ま「そうそう、市川真央。呼び捨てでいいよ、クラスメイトなんだしな!」
ゆ「真央…僕は柚子です。ゆーくんでもいいですよ」
ま「そっか、じゃあ柚子で。で、どうしたんだ?人でなしってなんの事だ?」
ゆ「あ、えっと。その…」
ま「葉織と喧嘩か?」
ゆ「そ、そんなわけじゃなくて。俺が言い過ぎただけで、」
ま「ふーん?まぁ、こんなストレスだらけの場所に居たら当たりがキツくなることぐらいある。よーし、着いてこい」
ゆ「え?えぇ???」
真央さんは最初は強引な人だな〜とか思っていたけど、いい人だった。深追いはせず、ただ俺の気晴らしのために学園内の色々なところへ連れて行ってくれて。なんていうんだろう……スパダリ感が凄い
ま「どうだ?気は晴れたか?」
ゆ「お陰様で…」
ま「そっか、じゃあ次は俺の友達に会ってもらうか!!」
ゆ「えぇ?いきなりは失礼なんじゃ…」
ま「大丈夫、大丈夫!もてなし好きなやつだからいきなりでも色々置いてるぞ!!」
ゆ「そういう意味じゃn」ま「よーし!!いくぞー!!!」
ゆ「ちょ、ちょっと!!」
案内されたのは学園内にあるオートロック式のマンション
8階の一番端にある部屋に連れていかれた
??「おー、もう帰ってきたのか」
ま「今日はお前に紹介したい奴がいるから連れてきた」
??「"連れてきた"って……ごめんな、えーっと。」
ゆ「直樹柚子…です」
い「俺は佐々木一郎、よろしく」
ゆ「よろしくお願いします」
ま「2人とも堅苦しいぞ〜、もっとリラックスリラックス〜」
い「誰のせいだと思ってんだ、うちの真央がごめんな」
ゆ「あっ、大丈夫です。真央のお陰で気分が晴れましたし、一郎さんにも会えましたし」
い「真央、こんないい子何処で捕まえてきた?」
ま「連れてきたって言ったよな?」
一郎さんと真央に俺はこの学校に入学してから、そして葉織さんとのことについて話した。真央も一郎さんも親身に聞いてくれたが、一郎さんには少し線が引いてある感じがして上手く話せなかった
い「……で、今に至るわけか」
ゆ「はい、そろそろ家に帰らないといけないのは分かるんですが。あんなこと言ってしまった手前で帰りにくくて」
い「その…俺が何か言っていいのかわからないけど…大変だったな」
ゆ「……!…………はいぃ」
ま「わー!泣くな、泣くな!!」
い「ほら、ハンカチ、ハンカチ。ティッシュも」
ゆ「あ"り"か"と"う"こ"さ"い"ま"す"」
ま「辛かったなぁ、大丈夫。大丈夫」
30分間ずっと泣いた、泣き疲れてウトウトしていたら玄関のチャイムが鳴ったと同時に葉織さんの声が聞こえた
ゆ「えっ……なんで?」
い「実は、俺が電話したんだ。いつまでも泣き続ける訳にも行かない、相棒なんだからお互いのこと知っとかなくちゃ。二人とも」
そんなこと、考えたこともなかった
葉織さんは同居人とばかり考えていたから
相棒だなんて、一度も…
は「ありがとう。僕が至らないばかりに一郎に気遣わせてしまって」
い「そんなことないって」
ゆ「なんで、なんで葉織さんはそうやって…」
は「柚子くん、いこうか」
ゆ「葉織さんはどうして…どうして、そうやって線を引くの?」
は「柚子くん?」
ゆ「一郎さんにも真央にも、クラスのみんなにだって
優しそうな目を向けるのに。どうして俺は違うの?そんな怖い目で見ないでよ、葉織」
は「…………」
ま「修羅場か?」
い「そうっぽいな。」
ゆ「いきなり出て行ったことは謝るよ、ごめん…でも、どうして幸せそうな目をしてあのプレゼントの山を捨てるの?俺はプレゼント以下なの?ねぇ、葉織」
は「僕は……」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!