ピピピピ
耳障りな音をならす目覚まし時計をとめ、重い体を起こす。
しかし休むわけには行かないので、身支度を整え、朝ごはんの用意をする。
朝ごはんといっても、とても簡単なものだ。
コンコン
私たちは特に会話も交わさず、無言で朝食を食べる。
仲が悪いという訳では無いが、あの日から、仲良く話すことは出来なくなってしまった。
妹は中学生なので、少し私より家を出るのが遅い。
今日もあの場所に行かなければならないと思うと、気が重い。
私の通う学校は、言わばお嬢様学校と言うやつだ。
しかし、私はもうお嬢様でもなんでもない。
ヒソヒソ.......ヒソヒソ
お金持ちの家の情報が回るのは早く、私がもうお嬢様ではないということはあっという間に学校に広まった。
そんな私に刺さる視線。聞こえてくる、陰口。
私の言葉も聞かず、ズカズカ踏み込んでくるこの人は、二階堂心愛。
私がお嬢様だった頃、私の家は心愛の家よりも財力があった。プライドが高い心愛は、それが気に入らなかったのだろう。私が落ちぶれた今、これでもかと言うほど、嫌味を言ってくる。
ガタッ。
私は席をたち、屋上に向かう。
私が逃げたことに満足したのだろう。心愛はクスリと笑う。
この学校に、もう、私の居場所はない。
以前、私にはもっと友達がいた。一緒に話した仲間がいた。
いや、友達と思っていたのは、私の方だけかもしれない。相手からすれば、私は、ただの"金ズル"や、親から言われて付き合っていただけだったのだろう。
自分にそう言い聞かせ、グッと流れそうになった涙を堪えた。
すると、急に眠気が襲ってきた。
最近、眠れない訳では無いが、眠りが浅い。
だからだろうか。私はすっと、眠ってしまった。
✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。