地面にはたくさんの瓦礫が散らばっていて、あちこちから炎と煙が上がっていた。
時々、爆発音が響き人の悲鳴が聞こえてくる。
肉の焼ける嫌な匂いと鉄が錆びた血の匂い、うめき声が聞こえる中、私達は走っていた。
瓦礫に何度も足を取られ転びそうになる私を力強く手を握り私を支えてくれる女性が居た。
私は思わず手を引っ張る女性をそう呼んだ。
私の声に気づいた女性は振り向き笑顔で話した。
ママと言ったがこの女性に見覚えが無い。
でも何処か懐かしい感じがする。
突然女性は立ち止まり近くの瓦礫に身を隠
す。
前に武装した兵士が二人が私達の方へ近づいて来る。
先程は気付かなかったけど私とお母さんらしき女性とは別に私の後ろにもう1人白衣を着た女性が居た。
その女性の表情は暗く生気が感じられない。
泣いていたのか化粧が崩れ涙の流れた跡がある。
白衣には血の跡が数箇所あり手も血で真っ赤だ。でもその血は女性の物では無いようだ。
ママらしき女性は白衣を着た女性に話しかけた。
女性は俯いたまま消え去りそうな声で応えた。
女性は俯いたまま応えない。
女性は肩を震わせながら泣き始めた。
ママらしき女性は怪訝そうな顔をして女性の肩を抱き締めた。
ママらしき女性の問い掛けには応えず女性はうわ言のように何度も謝った。
ママらしき女性がそこまで言うと兵士の1人が機関銃を此方に向けて怒鳴った。
私達は兵士の言う通りに両手を頭の後ろで組んで兵士の方へ歩き出した。
兵士は通信を終えると私達の後ろに着き1列に並ばされて歩き出した。
前を見るともう1人兵士が居て青ざめた顔で怒鳴り声を挙げた。
兵士の目線を見ると私達の後ろ方を見ている。
後ろの兵士が前の兵士に話しかけた瞬間後ろから「ドスッ」と鈍い音と共に兵士が吹き飛んで行くのが見えた。
そして、兵士は壁にぶつかり鈍い音がして動かなくなった。
私は思わず両手で顔を覆い見ないようにした。
気が付くと私の隣に白衣を着た男性が亡霊の様に立って居た。
私は驚き尻もちを着いてしまった。
男性は優しい声で手を伸ばして立たせてくれた。
もう1人の兵士が叫び機関銃をこちらに向け構えると、隣に居た男性が物凄い速さで走りあっという間に兵士の懐に飛び込んだ。
掌を下から突き上げる様に兵士の顎に当てると首から上が吹き飛んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!