宝田side
初めてあなたちゃんが来た時 ,
ボロボロの子猫を拾うような感覚だった 。
人間を猫に例えるのは失礼なのかも
しれないけれど , そう強く感じたのを覚えてる 。
加害者なのか被害者なのか 。
思うことは沢山あったけど ,
少し後ろで斜め下を虚ろな目で見る
あなたちゃんを見ると , その思考はかき消された
職員の方と一通り話し ,
私はあなたちゃんの方を向く
きっと話すことすら規制されていたのだろう 。
この子のことをまとめた資料にも ,
連合にはペットのように扱われていたと聞いた
酷く掠れた声で , ハイライトの入らない目で
驚いたようにそう聞いてくる 。
)) ギュッ … ,
涙目になりながらも ,
私はあなたちゃんを優しくぎゅっと抱きしめる
あなたちゃんは驚いた様子で ,
不思議なようにこちらを見つめてくる 。
私がそう言うと , あなたちゃんは
何かが吹っ切れたように涙を零し始める 。
あなたちゃんを連れてきた職員は ,
あなたちゃんの頭を撫でて部屋から出ていく 。
私も1つ涙を零した 。
数分経ち , あなたちゃんが泣き止んだ
のを確認して少し腕を緩める 。
あなたちゃんは綺麗な赤い瞳で私の目を捉える 。
初めて少し笑った顔を見た 。
最初の印象はボロボロの子猫だったけど ,
笑顔を見せた姿は子犬の方があっている 。
私が , この子を守らなくちゃ 。
久しぶりに人に強く情を抱いた 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。