私は探るように聞いた。
この世の人間は能力者を嫌い、見つけ次第捕まえ殺す。だから、人間だった場合逃げなければならない。
良かった。能力者だった…。
私にはやる事があった。ある少女を探していたのだ。
だから、彼に付いて行く事は出来ない。
今の世の中は能力者と分かれば即刻捕まり民衆の前で打首にされてしまうのだ。
アデンの目は本気だった。
怒りと悲しみに溢れている風に見えた。
自分が国を変える。そう思った時に体に電流が走った気がした。
彼女なら…
この国を変えていたかもしれない。
なら
アデンは私の手を掴むと走り出した。
__
アデンに連れられ路地の奥まった所へと来た。周りはまるで迷路のようで、私1人では迷ってしまいそうだった。
アデンが突然止まると目の前は細長い路地の一角に着いた。
そしてその奥にはカフェの様な見た目をした小さいビルがあり、freeと書かれたネオンが暗い路地を怪しく光らしていた。
まるで占いでもやっていそうな風貌だ。
アデンがドアを開けるとカウベルが鳴り、部屋の中にカランカランと鳴り響いた。
中は店のような内装でカウンターテーブルがあり、棚には年代物の酒瓶が綺麗に並べてあった。モスグリーンのソファーに、床は白黒のピータイル。そして、1番目立つのが外からでは想像できない広さのボーリング場があった。
私達が話していると中から話し声が聞こえた。
私は話し声が聞こえる方に注意を向けていると、反対側から男の人が出てきた。
男は私を睨み付けるように見た。
next_
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!