第16話

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2018/08/04 03:07
その帰り、なんとなく流れで二人で歩くことになった
私は少し先を歩く望に声をかける
あなた

望って、スミレの面倒までみるんだね

小瀧望
もともと、うちの犬だしな
えっ、と私は声をあげた
あなた

そ、そうなの?

小瀧望
母ちゃんが動物ダメなのに、姉ちゃんがもらってきたんだわ。それで、流星に引き取ってもらった
あなた

へぇー、知らなかった

あの、遙先生が
望はふん、と鼻を鳴らす
小瀧望
おまえの知らないことなんかたくさんあるんだ。俺たちの歴史なめんなよ
ふーん。そうですか、そうですか。
私はつい意地悪な気持ちになって、にやりと笑って望を見る
あなた

歴史って……流星が初恋だってこと?

望は明らかに動揺した様子だ
小瀧望
うっせぇな!そんなこと言ってんじゃねぇよ!俺はな、あいつがこーんな……
と、手で低いところを示して、
小瀧望
ちっちゃい時から、ずっと一緒なんだ!つい最近現れたお前なんかと違うって言ってんだよ!
むきになっちゃって
私の方には、べつに、張り合う気持ちなどない
あなた

うん……そうだね

実際、私にはまだ分からないことばかりだ
流星のことも、望のことも……この土地のことも、新しく友達になれたと思っていたあの子たちのことも……
ふと沈んでしまった私のことを、望がじいっと疑うように見つめてくる
小瀧望
おまえ、もしかして、流星が好きなのか?
あなた

好きっていうか……気になるっていうか

思わず正直に答えてしまった
すると望は言った
小瀧望
言っとくけど、流星は誰のことも好きになんねぇぞ?
私は予想外の言葉に、立ち止まった
あなた

なにそれ!なんでよ

小瀧望
うるせぇな
望はぶっきらぼうに言い、先を歩いて行く
しかし唐突に振り返った
小瀧望
おまえ、暇なんだべ?
あなた

え?

望はすいっと目を逸らすようにして、これまた予想外のことを言った
小瀧望
いつもは流星と行くんだけどな、今年はおまえで我慢してやる
だから、どこに?何を?

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