選択科目は美術ではなく、音楽を取った
音楽室での授業は、先生の伴奏で合唱の練習だ
私と雪音、真緒や愛永も一緒に歌う
でも、望だけは眠そうに口パクだ
それでいいのかい、と横目で見ていたら、案の定、音楽の先生に注意された
すると、生徒達がクスクスと笑い出す
中には「ちゃんと歌ってぇ」と先生の真似をしてからかう男子もいる
と望は反抗的で、言うことを聞かない
私の横にいた雪音がこっそり教えてくれた
私は驚いて、音楽の教師……小瀧遙を見る
まるで、似ていない
遙はほんわかした感じの、話し方や佇まいが上品な女性だ
柔らかそうな素材のブラウスがよく似合っていて、いかにも音楽の先生という感じ
とても、あの猛獣男の姉だなんて思えない
それに、年齢は二十七歳だと言うから、ずいぶんと年の離れた姉弟ということになる
あくまでも教師として弟を注意してから、遙はまた全体を見回して言った
遙がピアノを弾きだし、再び一同で歌い出す
私はふと、流星の様子が気になった
流星はやけに真剣に、遙を見ているのだ
大あくびをしながら、面倒くさそうに歌っている望とは対照的に
私は無意識のまま流星を見つめてしまい、そんな私を無表情で見ている雪音には気づかなかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。