結婚式は、小さな教会で執り行われた
春
東京より少し遅れてさくらが満開になった日
柔らかなピンクの花びらが舞い散って、式を祝福してくれているようだった
札幌市内を一望できる伏見の丘に建つ教会で、緑に囲まれた純白の建物で行われた式は、とてもロマンチックだった
タキシードで正装した泰弘は、緊張はしていたが幸せうだったし、由香里は、とってもとっても綺麗だった
流星や私のほか、望や雪音、スミレまで参列して、少人数ながらも、とにかく和やかな式になった
その後、泰弘と由香里を囲んでの家族写真を、望が撮ってくれた
ファインダーをのぞく望が浮かべていた何とも言えない表情に……この時、私は気づく事はできなかった
とにかく、こうして流星と由香里は(もちろんスミレも)、新しい家族になって、中野家にやって来た
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。