春の訪れを知らせるように、庭の雪が溶けて消えていく
私の部屋の机の上には、別の形で春の訪れがあった
合格通知や、この春から通う大学のパンフレットだ
部屋の中はダンボールが山積みで、私はせっせと脇目にも振らずに荷物の整理に追われていた
そこに、流星が入って来た
流星がため息をついたが、私は手を止めることなく片付けを続けた
そんな私に、流星がそっと聞く
私は、流星の質問には答えず、いつかちゃんと言おうと思っていたことを言った
流星は、じっと私を見つめる
優しくて、王子様みたいな流星
彼にひかれた時もあったのだ、と私は今、しみじみと思う
それに、と荷物を入れる予定の絵本の表紙に、そっと指を走らせる
流星は黙って、とにかく切なそうだ
それでも私は、明るく言う
私はそう言って微笑み、かつての王子様を見つめた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。