息急き切って保健室に入ってきたのは、望の姉の遙だ
私はちょうど、鼻にガーゼを入れて、流星に介抱されている時だった
遙は、ひどく申し訳なさそうに私に謝った
私は恐縮して首を振る
遙は安堵の息を吐いた
流星は、ずっと遙を見つめている
遙はそんな流星に気づいて、今度は彼に向き直った
流星は小さく頷く
やっぱり
私はそっと流星を見た
おかしいと思った
ふたりが口を聞かないなんて
遙が辛そうな顔で、呟くように言う
遙は、優しく流星を見つめている
奇妙な疎外感
私は、今さらのように気づく
流星と遙、ふたりの間に流れる、独特の空気に
遙はさらに、優しい穏やかな声で、流星に言う
流星は、一瞬だけ、とても弱ったような顔になった
流星は、震える声で聞く
流星の頬に涙が伝う
静かに、声も立てず、流星は泣いている
私はどうしていいか分からず、流星を見つめるばかりだった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。