放課後、体育館で望がひとりでバスケをしているところへ、雪音がやって来た
雪音はにこにこと笑って、自分もボールを手にすると、ゆっくりとドリブルを始める
望は、しばらく一緒にドリブルをしていたが、やめた
側にあるベンチまで行き、そこに腰掛ける
ちゃんとしなければならない
本当のことを、伝えなければ
それだけは、分かっている
望の様子に気づいた雪音は、ボールを放すと、隣に来て座った
並んで座る二人の間に、微妙な空気が流れる
望は束の間雪音を見つめていたが、やおら、ベンチの上に正座した
と、頭を下げた
雪音はしばらく無言のままだったが、やがて言った
望は正直に答えることにする
それくらいしか、雪音のためにしてやれないから
雪音はうつむき、目を伏せている
望はさらに言った
雪音は静かな声で呟いた
もう一度謝ると、雪音が望に手を差し出してきた
意味が分からないまま、望も手を出す
すると雪音が望の手を取り、ブンブンと振った
妙に明るく雪音は言い、望も戸惑いながら応じる
雪音は最後ににこやかに笑い、足元に転がっていたボールを望に放る
望がそれをキャッチする間に、雪音はこちらに背を向け、足元に去って行った
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。