私はバカだ
恋なんて、力業でどうにかなるかと、思っていたのだ
だから、関係のない神山を巻き込んで、最終的に、不愉快な思いをさせてしまった
どうにかなんて、なるはずがないよ………
放課後
私は、学校のトイレで、鏡に映る最悪な顔の自分を見つめていた
どうしたらいいのか分からない
分かっているのは、自分は最悪だってこと
せめて、自分にだけは正直に言ってしまおうか
鏡の中の自分を見つめながら、考える
そうだよ
自分にね
まず、自分にね
さあ、言うよ?
(望が、誰かのものになるなんて、寂しいよ!)
涙がにジム
でも、泣くわけにはいかない
うん、ここは学校だから
私は重いため息をつき、鏡の中の自分から目を背向けると、トイレから出た
するとそこに、待ち構えるようにして、雪音が立っていた
雪音は、挑むように私を見ている
私は驚き、ただ、黙って雪音を見つめる
雪音は真っ直ぐな、大きな瞳で、射抜くように私を見た
何を?
どんな話を?
どんな顔で?
私が黙っていると、雪音は携帯を取り出し、画面を私に突きつけるようにする
神山からのメールだ
雪音は携帯を引っ込めて、さらに聞く
雪音の真っすぐな瞳
ああ。もう、ごまかせない………ごまかしたくない
雪音のことも、自分のことも
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!