第62話

61
678
2018/11/04 08:14
その頃、望は、高校の体育館で、ひとりでバスケをしていた
望も受験生なのだが、ひとりで家にいると、突然叫び出したくなるようなイライラに襲われるのだ
何度も、何度も、ひとりでシュートやドリブルを繰り返した
真冬の体育館は冷えていたが、望はすぐに汗だくになった
どのくらいの間そうしていたのか
望はとうとう、大の字になって倒れこんだ
高い天井をにらむようにして見上げる
くそっ、と悪態をついた
あなたのやつ
あれから、まったく連絡してこない
登校も別々だから、話す機会もなくなった
そもそも、姿さえ見ていない
それが平和だ、と思う自分もいる
なぜなら自分は今、慎重な男
青木雪音とも別れたばかり
しかし………なぜ、最近、こんなにも苛つくのか
望はむくりと起き上がって、再びドリブルを開始した

プリ小説オーディオドラマ