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2021/09/16

第6話

俺の運命の人に違いないんだ/Side.廉
俺は俺なりに、素朴な彼女にも似合うものをと懸命に選んだつもりだった。


きっと喜んでくれるだろう、それなりに名の知れたブランドのものなら失礼もないだろうと思っていた。


過去に見たドラマでは、好きな女性に安物を手渡して苦笑いされる場面があったからだ。
黒崎 廉
黒崎 廉
(どういうことだ……? じゃあ、何をプレゼントしたら喜んでくれたんだよ?)

彼女が他の女の子と違うというのは、分かっているつもりだ。


俺に色目を使ってこないし、その前に俺のことを知らなかった。


一昨日の態度を見ていても、純粋で裏表のない人間だと思う。
黒崎 廉
黒崎 廉
(落ち着け……。ここで関わりを絶つわけにはいかない)

焦る気持ちを抑え、爽やか系男子の仮面を装着したまま口を開く。
黒崎 廉
黒崎 廉
それなら、今度一緒に出掛けない? 代わりになにかご馳走するよ
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
いえ、ただでさえお金を使わせてしまいましたし……。
それに、まだあまり知らない人と、出掛けるのはちょっと……

尻すぼみになりながら、彼女が申し訳なさそうに言う。


女の子を誘うというのは、こんなにも難しいのか。


世の男性たちがどうやって恋愛をしているのか、俺はまだよく分かっていないようだ。
黒崎 廉
黒崎 廉
(やっぱり、今までに会ったことのないタイプだ。これも断られるなんて……)

次の手を考えているうちに、一昨日図書館にいた男が静かに俺たちのところへとやってきた。
白藤 築
白藤 築
もうすぐHRホームルームなので、先輩も教室に戻った方がいいですよ
黒崎 廉
黒崎 廉
……!

俺に負けないくらいの爽やかな笑顔で言われ、軽くイラッとする。


しかし、これ以上ここにいても、彼女を困らせるだけかもしれない。
黒崎 廉
黒崎 廉
騒がしくさせてしまって、ごめんね
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
いえ。
あの、逆に気を遣わせてしまったみたいで、こちらこそごめんなさい
黒崎 廉
黒崎 廉
気にしないで。
俺が勝手にしたことだから

にっこりと笑って見せて、俺は紙袋を持ったまま、その場を後にした。


紙袋をカーディガンの中に隠し、三年の教室に戻る。

女子生徒
女子生徒
黒崎くん、一年生のところに行ってたってほんと?
女子生徒
女子生徒
相手誰? 知り合いの子?
女子生徒
女子生徒
彼女とかじゃないよね?
黒崎 廉
黒崎 廉
別に……。
あんたたちには関係ない

噂というのは早いもので、彼女の教室に行っていたことが既に俺のクラスで騒ぎになっていた。


数人の女子が俺に詰め寄ってくる。
黒崎 廉
黒崎 廉
(一体誰が広めた?)

同じクラスというだけで、馴れ馴れしくされるし、行動まで監視される――正直、こういう女子たちにはうんざりだ。


普通の学生らしく過ごしたいと思って、母の実家がある田舎に来たというのに。


溜め息をついて、自分の席に着く。
茶山 清
茶山 清
廉、どうした?
自分から女の子に会いに行くなんて、お前らしくもない

斜め前の席にいた親友・茶山さやまきよしが、明るく声を掛けてきた。


こっちに移り住んで初めて、俺が信用できると思った友人だ。


元から俺の祖父母と仲も良かったし、裏表のない素直で潔い性格をしている。
黒崎 廉
黒崎 廉
……清、後でちょっと話できる?
茶山 清
茶山 清
よっしゃ、任せろ

清はニカッと白い歯を見せて笑った。



***



昼食時、俺たちは二人きりで話ができるようにと空き教室に移動した。


一昨日、桃原友梨佳という女の子と衝撃的な出会いを果たしたこと、彼女は俺を知らなかったこと、そして彼女の興味を引くために教室に行ったことを清に話す。
黒崎 廉
黒崎 廉
こんなに胸がドキドキするのは初めてで。
あの子はきっと、俺の運命の人に違いないんだ……
茶山 清
茶山 清
お、おう……。
でもその笑い方、気持ち悪っ。
映像の中の格好いいお前はどこいったんだよ
黒崎 廉
黒崎 廉
はあ? 俺の笑い方が気持ち悪いわけあるか

清の肩を軽く殴ると、やつはケラケラと嬉しそうに笑った。
茶山 清
茶山 清
冗談だよ。
お前が女子に興味持つなんて、いい変化じゃないか!
俺は応援するよ
黒崎 廉
黒崎 廉
……あ、ありがとう
茶山 清
茶山 清
まあ、俺も散々女子の橋渡しに使われてるからな……。
お前に近づきたいがために、好きでもない俺と付き合おうとするあたり、マジこえぇよ
黒崎 廉
黒崎 廉
それは……悪いと思ってる
茶山 清
茶山 清
いや、お前が悪いわけじゃないし。
お前だってこれでやっと前に進めるし、うまくいくといいな

今度は逆に肩を叩かれ、励まされた。


清の前では、安心して素の自分を見せられる。


けれど、〝演技をしていない俺〟は、何の面白みもない人間で。


素の状態で彼女に迫っても、ときめかせるどころか、興味すら持ってもらえないだろう。


【第7話へつづく】