第7話

本当に同一人物?/Side.友梨佳
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2021/09/23 09:00
灰谷 亜季
灰谷 亜季
黒崎先輩は昔、子役でデビューして、演技が上手すぎて当時すごく話題になったんだけど
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
こ、子役……?
えっ、芸能人だったの!?
灰谷 亜季
灰谷 亜季
あはは、友梨佳は全然テレビもネットも見ないもんね。
てっきり黒崎先輩くらいは知ってると思ってたけど、知らなくても仕方ないか

黒崎先輩が教室から去った後、私は亜季ちゃんに彼の話を聞いていた。


元芸能人だったと聞いて、驚きで口があんぐりと開いている。


先輩の自分を知っているだろうという自信満々な態度に、ようやく合点がいった。
灰谷 亜季
灰谷 亜季
で、二年くらい前かな。
人気絶頂だったのに、突然引退しちゃって。
で、お母さんの地元だっていうこっちに帰って来たの。
あの見た目だし、元芸能人だし、この学校でも大人気
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
そういえば、先輩も何か他に名前を言ってたような……
灰谷 亜季
灰谷 亜季
黒崎佐夜子と、KYOJIじゃない?
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
あ、それだ!
灰谷 亜季
灰谷 亜季
お母さんが大女優で、お父さんは有名なミュージシャンだから。
まあ多分、親の影響もあって芸能界に入ったんだろうね
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
……なるほど

まさか、先輩の両親も芸能界の大御所だとは。


でも、雲の上の存在というか、元々興味がなかった世界の人だから、近くにいてもあまり実感がわかない。
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
それなら、さっきは失礼なことしちゃったかな……

あんな高価なものをぽんと買える財力も、元芸能人なら理解できる。


彼にとっては、あれが普通だったのかもしれない。
灰谷 亜季
灰谷 亜季
そんなことないよ。
私は友梨佳らしくていいなと思ったよ。
そりゃ、いきなり高価なものを押し付けられたらびっくりするよね。
私だって素直に受け取るか迷うもん
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
うん……ありがとう

亜季ちゃんの言葉にほっとして笑いながらも、次に先輩に会った時が気まずい。


どう接するのが正解なのだろうか。


自分の席に戻ると、隣の席にいる白藤くんがこっちを見た。
白藤 築
白藤 築
大変だったね。
まあ、ちょっとやっかみが増えるかもしれないから、僕が力になれることがあれば何でも言って
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
ありがとう。
それにさっき、教室の騒ぎが収まるように、先輩にああ言ってくれたんだよね?
白藤 築
白藤 築
あの人を帰すのが一番だと思ったから
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
すごく助かった。
白藤くんはいつも優しいね

私には、亜季ちゃんや白藤くんという心強い味方がいる。


それに、先輩とは大して関わりもないのだから、後ろめたいこともない。


私が自分を鼓舞するように笑うと、白藤くんも穏やかに微笑む。


けれど、彼は何か言いたいことをぐっと飲み込んだような目をしていた。
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
(もっと忠告したかったのかな……。でも優しい人ほど、余計なことは言わないよね)

白藤くんにもう一度話しかけようとしたところで、担任の先生が入ってくる。


点呼が始まる中、私は一昨日の先輩とさっきの先輩の様子を思い出していた。


一昨日は上から目線で言葉遣いも荒くて、さっきはすごく爽やかで好青年な感じ。
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
(絶対、雰囲気違ったよね?)

更に言えば、最初に本を探しに図書館に入ってきた時は、なんだか気怠そうでぼーっとしていた。
桃原 友梨佳
桃原 友梨佳
(本当に同一人物なのかな……。双子、とかはないだろうし)

黒崎先輩は、一体どんな人なのだろう。


私の中で、彼に対する興味が次第に強くなってきていた。


【第8話へつづく】

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