私たちは今、ドーナツ屋に来ている。
今日は、女王を倒す第1回作戦会議をする。
けど、何故かドーナツ屋に行きたいと伏見さんが
言った。
伏見さんは4軍。
いつも自分の意見は言わずに1軍2軍の言いなりだ。
そんな伏見さんが自分の意見を3軍のまあまあ
良い位置にいる私に言ったのだ。
よっぽどの理由があるハズだ。
保健室の女教師、潮目渚 先生と
理科の男教師、桐島和人 先生が...?
潮目先生は、いつも優しくて面白い。おまけに
可愛い。
桐島先生は、いつも元気で親しみ安く、そこらの
女子がイケメンと騒いでいる。
そんな先生たちが、伏見さんに無料チケットを...?
どんな接点が...
“4軍”の伏見さんに?
おかしい。
普通、教師はカースト制度を認めない。
だから見付けたら即説教だ。
なのに、まだ先生たちはカースト制度に
触れてない。
というか、バレてない。
だから、おかしいのだ。
何故、あの二人の教師は動かない?
普通は気付いた時から動いて生徒を助けようと
する。
もちろん、それは《偽善》だけど。
所詮、教師は偽善の塊だ。
もしかしてあの先生たちは、《偽善者》じゃない?
どの先生よりも、生徒と先生の境界線を分かって
いる?
伏見さんは楽しそうに笑った。
...伏見さんって、こんな顔もできるんだ。
他の話に気を取られ過ぎた。
案、か...
よし。決定だ。
絶対に、成功させよう──────────────────
お腹に、痛みを感じた。
...蹴られた。
クラスメイトは嘲笑う。
私を蹴りながら。
スクールカーストって、残酷だよね。
4軍なんて、ほら...
水が入ったバケツを頭の上でひっくり返されたって
何も言えない。
髪が水でベタベタする。制服もしわくちゃだ。
何で?何で、あんたらがばらまいた水を私が
片付けなきゃいけないの?
クラスメイトが去った教室で独り、不満を呟いた。
本当は、この不満の続きも言うつもりだった。
誰も、いないから。
けど、この先を言っちゃいけない気がした。
この先を言ったらきっと、私は...
泣いてしまうから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!