第3話

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2019/02/16 06:31
栗原 瞳
...
私は、無心で雑巾を手に取り、床を拭き始めた。


4月、中学校に入って、7月の今までずっと 笑ったことなんてなかった。

4軍だから。


この学校のスクールカーストは、1軍2軍3軍まで
そんな大差はない。

3軍に親友をもつ1軍だっている。

けど、4軍...4軍だけが他より大きな差を
つけられていた。


4軍だけが、苦しんでいる。






ガラッ





突然、教室の扉が開いた。


私はあまりに突然のことだったので、肩をびくっと
揺らした。

そして、ゆっくりと扉の方に視線を向ける。


______谷崎桜だ。

1軍の親友をもつ3軍の女子。


本当、恵まれてるよね。あんた。



私は谷崎桜を見た後、また無心で床を拭き始めた。
谷崎 桜
...もう、帰って良いよ。
突然、谷崎桜が誰かに話しかけた。
谷崎 桜
聞いてる?栗原さん。
栗原 瞳
...え、私?
谷崎 桜
あははっ!他に誰がいるの?
クラスメイトが私を見て笑っている。

でも、いつもと違う。嘲笑ってない。
栗原 瞳
え、でも、帰って良いって...
谷崎 桜
うん。後は私がやる。
谷崎桜はそう言って、私の持っている雑巾を
指差した。
栗原 瞳
......え?
どうして?どうして、3軍の人が...
谷崎 桜
あ、今「どうして、3軍の人が」
とか思ったでしょ?
栗原 瞳
え?あ、はい...
谷崎 桜
私の親友に頼んで、栗原さんを
いじめていた人を1軍から3軍に
落としてもらった。
谷崎桜の親友、つまり、女王...
栗原 瞳
でも、どうして...
谷崎 桜
えー。だって、いじめとか
嫌じゃない?
谷崎 桜
これでも私、臆病だからさー。
親友にお願いするまで時間
かかっちゃった。
谷崎 桜
ごめんね?
谷崎桜は苦笑した。
栗原 瞳
い、いえ...
谷崎 桜
良かった!
谷崎 桜
じゃあ、これから宜しくね!瞳!
栗原 瞳
え、私の名前...
谷崎 桜
良いじゃん。もうぶっちゃけて
私たち、親友で良いと思う。
谷崎 桜
瞳を助けたんだから、お願い
聞いて?
谷崎 桜
私、瞳の親友になりたい。
夢じゃ、ない...?

私、今、目の前に“親友”がいる?

中学に入ってからずっと欲しかった親友が、今
できるかもしれない...


私は、目を丸くしてクラスメイトを見ていた。


何もかも突然のことで、驚いていたが、一番驚いた
のが...




クラスメイトが微笑んでいる、ということだ。




私に向かって、優しく笑っている。








その瞬間、私に光が差した気がした。










谷崎桜は、授業の時にあった作文発表で

「苦しんでいる誰かに少しでも光をあげられたら
私は少しでも良い大人になれる。」

そんなことを言っていた。


その時は「たかが綺麗事、」なんて思っていた。


けど、この人は、谷崎桜は、本当の綺麗な事に
したんだ。







この人は、凄い。







栗原 瞳
...私も、なりたいです。
栗原 瞳
谷崎さんの、親友に...!
私がそう言うと、谷崎桜は私の頬を摘まんだ。
谷崎 桜
だったら、“谷崎さん”じゃなくて
“桜”ね!
谷崎 桜
あと、タメ口で!
谷崎 桜
親友、でしょ?
桜は笑った。

この時から私は、桜の笑顔が好きになった。


私の心を、光で満たした素敵なものだから.....。

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