休日。
家のインターフォンが鳴ったので、家を出ると
門の前に桜が立っていた。
桜はそう言って、ひゃっひゃと笑う。
...桜の笑うつぼはどこにあるんだろう。
え、急に...
でも、中学に入って友達とかと遊ばなかったから
なんか凄くうずうずする。
桜は飛び跳ねながら笑った。
それが何だか微笑ましくて、私はふふっと笑った。
桜はそんな私を見て、嬉しそうに歩き出した。
「うん。行こう。」
その言葉の代わりに、少しだけ口角を上げる。
────施設。
親のいない子供たちが集団で過ごす場所だ。
桜の目線の先には、一人の女性__桜の様子だと恐らく“鮎川さん”__がいた。
笑顔が素敵な若い女性だ。
すると、施設の中から小さな子供たちが出てきた。
桜がそう言ったので、私はペコリとお辞儀をする。
子供たちは、私に期待の目を向けた。
...これを断れる人はいないだろうな。
私は微笑む。
桜は姿勢を低くしてにっこり笑った。
桜がそう言うと、鮎川さんはにっこり笑ってから
施設へ入っていった。
あれから、私と桜は子供たちと思いっ切り遊んだ。
そして今は、昼寝の時間。
子供たちは施設の中で眠りに付いていた。
私は眠りに付く子供たちの横で、小さめな声で
桜に話しかけた。
すると、桜が私の手の上に自分の手を置いた。
桜は悲しそうに笑う。
この時私は、
「ああ、だから桜は私をここに連れてきたんだ。」
と確信した。
───────どんなに嬉しいだろうか。
きっと、桜はそう言いたかった。
けど、言えなかった。
綺麗事だと気付いたから。
私がそう言うと、桜は微笑んだ。
...悲しみが残ったままの、笑顔で。
桜は目を見開いた。
そしてその顔は、みるみるうちに素敵な笑顔に
変わった。
本当に、できると思った。
この時だけは、ね──────────────
クラスの掲示板に載った写真を見て
クラスメイトは口々に暴言を吐く。
私だよ。
なんて、言うと思ったか。
永野百合。ついこの間、4軍に落とした人だ。
『4軍へ、ようこそ。』
永野百合はにっこりと笑った。
「皆が、幸せになれたら...」
ねぇ、桜。
そんなの、無理だよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!