永野百合が4軍に落ちて、一週間が経った。
クラスは平和、というわけにもいかず。
あんたらがやったくせに。
人の頭の上でゴミ箱をひっくり返すの、そんな
楽しい?
廣中円香は醜い笑顔を浮かべた。
そして、教室から去っていった。
それと同時に、止まっていたクラスの時間が
動き出す。
まるで、何もなかったかのように。
勿論、私も無視をする。
「落ちたくないから。」
それは全員共通の理由。
だから、伏見さんの味方は誰もいない。
けど、味方になれと言われてなったんだ。
少しは気にかける。
伏見さんは笑った。
心から、笑っているような。
本当は辛いはずなのに。
笑顔が完璧だ。
何もなかった、今までのは見間違い。
そう、思わせるほどだった。
また、笑った。
気持ち悪いほど完璧だ。
私はそれだけ言って、教室を出た。
昇降口に向かう途中、潮目先生と桐島先生に
ばったり会った。
それだけ会話を交わし、お互いに通り過ぎる。
──────あれ?そういえば...
二人が驚いたような顔で振り返る。
潮目先生が笑顔で私に向き合う。
桐島先生も、潮目先生につられるように向き合う。
言葉が詰まる。
私、馬鹿だ。
自分から話しかけたのに、言葉を選びきって
いなかった。
数秒間、妙な空気が漂う中で潮目先生と桐島先生は
しっかりと私に向き合って、言葉を待って
くれている。
私はそれだけ言って、昇降口に走り出した。
伏見さんとあの先生たちは、仲が良い。
きっと、ゴミ箱を片付けるの手伝ってくれる。
私に勇気はないけれど、これくらいはしないと。
───────あれ?
私は何でこんなことしてるんだろう。
いつもの私ならしないのに。
何か、おかしいのかな...
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!