数分後、桐島先生が車に乗って戻ってきた。
桐島先生は車からおりると、私たちの方へ行かずに助手席の扉を開けた。
そこから出てきたのは────────
目の前には、伏見さんがいた。
私が傷付けて、突き放した仲間──────
伏見さんは、笑った。
あの完璧な笑顔でも、私に見せた優しい笑顔でもない。
どこか悲しげな、少し怯えてるような、何とも言えない笑顔だった。
葉連さんと潮目先生は、そう言って私と伏見さんに背を向けた。
桐島先生は私と伏見さんに笑いかけた。
伏見さんはくすくすと笑う。
桐島先生もいたずらっぽく笑い返す。
何とも新鮮な光景だった。
桐島先生は手をひらひらと振って、その場を去った。
──────今ここにいるのは、二人だけ。
伏見さんと、
私。
伏見さんは私に歩み寄った。
そして、右手を大きく振りかぶる。
殴られ────────────
────────ペシッ
優しく、やんわりと頬を叩かれた。
あんなに大きく振りかぶるものだから、勢い良く殴られるかと思った。
伏見さんは突然、大声を上げた。
伏見さんは涙目だ。息も荒い。
いや、違くなんかない。
私は────────────
それは...
.....え?
......え?
.....え?拾った?
......え?
そん..な....
『邪知暴虐な女王様だね。』
その言葉が、とどめの一撃だった。
もう、とうに分かっていたハズなのに。
思い知らされた。
「私がどんなに自己中心的だったか。」
ただの生ぬるい後悔だけで
「やっと死ねる」なんて、馬鹿みたい。
『お前に死ぬ価値は無い。』
『一生苦しみ続けろ。』
心の奥で、そんな声が聞こえた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。