廉はとっくに学秀を許している。
なぜなら____
あの夜、学秀が「逃げろ」と言ったから。
あの一言がなければ、廉は完成実験にかけられていた。
だから廉にとって学秀は「加担者」じゃなく、
「共犯者」でもない、“救命者”である。
でも学秀は自分を許していない。
廉を見て見ぬふりをしたこと。
自身の父に逆らえなかったこと。
強くなろうとした結果、誰かが壊れたこと。
だから廉と目を合わせない。
廉の目的として、殺せんせーをどうするかとは
別に、もう一つの目的がある。
救うっていうのは甘やかすことじゃない。
本気でぶつかること。
再開後の空気感は...
廊下ですれ違う。
短い会話、でも全部分かってる。
三学期の期末試験前日
今回、理事長がクラス責任者を担当する事になり、
学秀は担当から下ろされた。
学秀は、放課後、屋上にいた。
風が強い。
学秀はいつものように景色を見ている。
足音がするが、振り返らない。
廉は数歩離れた場所で止まる。
沈黙。
そして、初めて感情を混ぜた声____
学秀の指先がわずかに止まる。
廉は一歩近づく。
風が強く吹く。
学秀の眉がわずかに動く。
廉の声が低くなる。
沈黙。
廉が即答する
学秀が初めて廉を見る。
強い目、でも揺れている。
廉はさらに踏み込む。
一瞬、触手がわずかに揺れる。
でも展開しない、完全に制御している。
その言葉は鋭い、でも優しい。
廉は少しだけ笑う。
長い沈黙。
風が止む。
学秀が小さく息を吐く。
でも、目は穏やかだった。
ねくすと














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!