彼女から織原とは中学時代の時に交流があり、告白をされて以降は互いに会うことも無いぐらいの薄い関係だということを伝えられた。
パソコンにあの映像を流して、あなたの反応を伺う。
いつもなら頼りがいがあって、芯の強いあなたが、今はとても小さく見えて、触れたら崩れてしまうんじゃないかと思うくらいに弱々しく見えた。
あなたは女の子だ。それは分かりきっていること。なのに今はとても強く思う。
壊れ物を扱うように、彼女の手に触れて、優しく包むように握る。
少し震えていて、また酷く冷たかった。
以前もこんなことがあったなと思い出す。
その黒くて艶のある髪も、真っ直ぐで純粋な瞳も、華奢な体も、他の人より一段と白くて透き通るような肌も、少し低い体温も、その人柄も、
全てが愛おしく思えて、ぜんぶ僕のものにしたいと思ってしまうんだ。
その熱の篭った瞳が見つめるのは、僕だけであってほしい。
けれどそれでいいのか?僕はきっとたくさん呪われていて、血塗られた世界を進んでる。
そんな僕は彼女に願ってはいいのだろうか?
同じ道を一緒に歩んではいけないのか。
自身の中で葛藤する。
今この時も、本当は触れてはいけないんじゃないかと思うくらいには。
それでも動かずにはいられなかった。
そう言って彼女はふっ、と笑った。
浮いていた心臓がすとんと落ちるように安心した。
長い沈黙。
だけど話そうとは思わなかった。
自然と心地良いくらいな時間がゆっくりと流れる。
むしろ彼女とはこうしていた方がいいのではないかと考えた。
変に言葉を紡ぐよりも、こうして2人で体温を分け合って、言葉にせずとも通じ合うような思いで繋がっていればいいんじゃないかと思った。
お互いの体温が同じくらいになって、震えがおさまった時、彼女が最初に言葉を発する。
たはは。と誤魔化すように軽く笑うと、
彼女が言った。
突然の爆弾萌え発言で死ぬところだった。
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ピッ
織原に会うといってもどうやって会うのか。そんなの簡単だ。直接連絡して会えばいいだけである。
現在、時刻は11時を回る。真夜中。
学校ならもう人がいないはずだし、あなたと織原が過ごしていた中学校なら織原が来る可能性も高いだろう。
という訳で織原を呼び出して待っているというのが現状だ。
相手の出方を伺いながら少しの沈黙を待つと、織原が言った。
織原が嘲笑うかのように口角をあげた。
瞬間的にあなたを庇った。
どうやら織原が攻撃を仕掛けてきたらしい。あいつ、呪術使えないんじゃなかったのか。
いや、ありえるな。
今まで隠してきた可能性もある。
だけどこの呪力……どこかで………
episode20へ続く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!