第27話

✧︎episode:19✧︎
405
2021/02/14 01:31
五条悟
五条悟
………織原とは、それ以降なんにもなかったわけ?
黒崎
黒崎
はい。告白されて以降は何も。話しかけられたりもせず、そのまま私が高専へ行った感じです。高専入った後も関わってないですし、連絡先も持ってません。


彼女から織原とは中学時代の時に交流があり、告白をされて以降は互いに会うことも無いぐらいの薄い関係だということを伝えられた。



五条悟
五条悟
(前にあなたが言ってた素振りのように、織原はあなたがいた時には見えていた素振りはしてなかったはず。なのに、"あの映像"。)
五条悟
五条悟
……あなた、この映像見てくれる?だいーぶ気持ち悪いかもだけど。
黒崎
黒崎
……?はい。別にグロは大丈夫ですけど
五条悟
五条悟
んー、そうじゃないんだよね。ま、とりあえず見て。


パソコンにあの映像を流して、あなたの反応を伺う。

黒崎
黒崎
___何これ、キッショ。
五条悟
五条悟
(ククッ…心底引いてる時の顔だ。これ、)
黒崎
黒崎
しかもこれ、あんたと暫く任務しなかった時の映像じゃないですか。誰が撮ったんです?
黒崎
黒崎
ツギハギの特級?
五条悟
五条悟
違うだろうね。恐らくこれは織原和人。
黒崎
黒崎
は、織原が?
五条悟
五条悟
君にはわからないかもしれないけど、ヒトって執念深くて醜かったりするからね。特にプライドが高い奴に限って。
黒崎
黒崎
???
五条悟
五条悟
まぁ織原がこれを撮ってるのには間違いない。実はこれ織原の裏のプロフィールに挟まれてたもの。織原は君に振られて、君がいなくなった途端に荒れ始めててね。警察に厄介になってた。
五条悟
五条悟
そして今回の件、恐らく織原は君を虐めてあげたいんだろ。
黒崎
黒崎
はぁあ?虐めてって……
……!
五条悟
五条悟
好きな子には虐めてあげたい人っているでしょ?織原はそれが度が過ぎた人間。君を手に入れたかっただけどまんまと振られてプライドが傷ついてそれが拗れて拗れて拗れまくって君をぐちゃぐちゃにしてやりたいって思ったんだろ。
五条悟
五条悟
それの根拠が、改造人間。
黒崎
黒崎
____
五条悟
五条悟
どうやって知り合って和解したのかは知らないけど何らかの形で、何らかの意見が合ってツギハギの特級に協力をしている。そしてしてもらっている。
五条悟
五条悟
そして、ツギハギの特級は悠仁__の中に潜む両面宿儺を仲間に入れたいが為に、悠仁の精神を痛ませるように、一般人を術式で変形させて、人間を殺させるようにしたんだろう。
黒崎
黒崎
それは、健人さんから?
五条悟
五条悟
そう。だから織原もツギハギも互いにやりたいことは別だけど、なにか縛りをつけて協力してんのか、それとも織原が躍らされてるだけなのか。
五条悟
五条悟
__それを確かめるためにも、今から織原とは会わなきゃあいけない。
黒崎
黒崎
そう、なりますよね。
五条悟
五条悟
………今は憎いとは言え、元クラスメイトを手にかけるには辛い?
黒崎
黒崎
いいえ。そうじゃないんです。
織原を殺すのは別に痛まない。特別な感情は持ってませんでしたから。ただ___
黒崎
黒崎
ここまで殺したいと、思ってる自分が初めてで。怖くて、会ったら止まらないんじゃないかって。殺したいと思う自分が、醜く感じる。
黒崎
黒崎
_殺したら、私は私でいられるんでしょうか。黒崎あなたでいられるんでしょうか、今はそれが、すごく怖い。
五条悟
五条悟
………あなた、



いつもなら頼りがいがあって、芯の強いあなたが、今はとても小さく見えて、触れたら崩れてしまうんじゃないかと思うくらいに弱々しく見えた。



あなたは女の子だ。それは分かりきっていること。なのに今はとても強く思う。



壊れ物を扱うように、彼女の手に触れて、優しく包むように握る。



少し震えていて、また酷く冷たかった。
以前もこんなことがあったなと思い出す。





五条悟
五条悟
(……やっぱり、生徒として見れないよ。ほっとけない)
五条悟
五条悟
(だって、俺はこんなにも君が愛おしいと思ってしまうのだから。)



その黒くて艶のある髪も、真っ直ぐで純粋な瞳も、華奢な体も、他の人より一段と白くて透き通るような肌も、少し低い体温も、その人柄も、




全てが愛おしく思えて、ぜんぶ僕のものにしたいと思ってしまうんだ。





その熱の篭った瞳が見つめるのは、僕だけであってほしい。



けれどそれでいいのか?僕はきっとたくさん呪われていて、血塗られた世界を進んでる。





そんな僕は彼女に願ってはいいのだろうか?




同じ道を一緒に歩んではいけないのか。





自身の中で葛藤する。
今この時も、本当は触れてはいけないんじゃないかと思うくらいには。




それでも動かずにはいられなかった。

黒崎
黒崎
………あの、もう少し強く握ってくれませんか?
五条悟
五条悟
え……あ…こう?
黒崎
黒崎
ありがとうございます。



そう言って彼女はふっ、と笑った。


浮いていた心臓がすとんと落ちるように安心した。


五条悟
五条悟
____
黒崎
黒崎
_____



長い沈黙。



だけど話そうとは思わなかった。


自然と心地良いくらいな時間がゆっくりと流れる。




むしろ彼女とはこうしていた方がいいのではないかと考えた。



変に言葉を紡ぐよりも、こうして2人で体温を分け合って、言葉にせずとも通じ合うような思いで繋がっていればいいんじゃないかと思った。






お互いの体温が同じくらいになって、震えがおさまった時、彼女が最初に言葉を発する。



黒崎
黒崎
あの、もう、大丈夫です。
ありがとうございました。
五条悟
五条悟
こっちこそごめんね?
勝手に触りすぎました。


たはは。と誤魔化すように軽く笑うと、

彼女が言った。

黒崎
黒崎
___いえ、むしろこうしてくれるとありがたいです。安心、するので。
五条悟
五条悟
___もっとやっていいってこと?
黒崎
黒崎
え、あ、ほどほどになら…?
五条悟
五条悟
本当にいいんだね?
黒崎
黒崎
はい。別に……
嬉しかったので………
五条悟
五条悟
______
黒崎
黒崎
五条先生?








突然の爆弾萌え発言で死ぬところだった。



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五条悟
五条悟
七海、ツギハギは今どこ?こっち来てないよね。
七海健人
七海健人
行ってないと思いますよ、先程瓦礫で閉じ込めましたから。まぁ、そんなに長くは持たないはずですし、なんせ特級ですから。お早めに話は済ませた方がいいかと。
五条悟
五条悟
ありがと。悠仁をお前に頼んでよかったよ。
七海健人
七海健人
___どうも。それじゃあ失礼します。


ピッ

黒崎
黒崎
本当に来るんですか…?
連絡して来るとかアホすぎる
五条悟
五条悟
必ず来るよ彼なら。
だって君がいるんだもん。



織原に会うといってもどうやって会うのか。そんなの簡単だ。直接連絡して会えばいいだけである。




現在、時刻は11時を回る。真夜中。


学校ならもう人がいないはずだし、あなたと織原が過ごしていた中学校なら織原が来る可能性も高いだろう。


という訳で織原を呼び出して待っているというのが現状だ。



五条悟
五条悟
思いだすね、あの頃を。
黒崎
黒崎
ここで出会いましたからね。
……ほんと、なんで変な人についてきちゃったのかなぁ。いかのおすし守ればよかった。
五条悟
五条悟
ちょ、それ僕不審者!!!
黒崎
黒崎
___でも、やっぱり後悔なんてしてませんよ。
五条悟
五条悟
…………
黒崎
黒崎
呪術師であることを、怖くて、逃げたくなる時もありました。でも、後悔なんて1度もしてない。
黒崎
黒崎
貴方は私の道標を作ってくれた人。それがどんなに険しくても、私に光をあててくれた人には変わりない。あのままだったら私は、この世界の死人も同然だった。
黒崎
黒崎
あなたがいなければ、私は私じゃなくなってた。…だから、その、本当に感謝してますよ!
五条悟
五条悟
………ぷ、クククッ……っはははは…!
黒崎
黒崎
ちょっと、どこに笑う要素ありましたか?敵がくるんですよ?
五条悟
五条悟
いや、だって……最後ヤケクソだったなって……ククッ……
黒崎
黒崎
___でも本当のことをいったまでです。
五条悟
五条悟
っはいはい。拗ねないのー
黒崎
黒崎
別に。拗ねてません。
織原和人
織原和人
__やぁ、お取り込み中申し訳ないね。元気してた?
黒崎
黒崎
___!
五条悟
五条悟
…それはどうも。そっちこそ来てもらって感謝してるよ、織原和人。
五条悟
五条悟
(……さぁ、どうでてくる?)


相手の出方を伺いながら少しの沈黙を待つと、織原が言った。



織原和人
織原和人
回りくどいのは好きじゃない。まず簡潔に言おうか、僕が何故あなたを狙ってんのかを。
黒崎
黒崎
………
五条悟
五条悟
そりゃあ、随分とご丁寧に。
織原和人
織原和人
___俺はさ、壊したかったんだよ。
織原和人
織原和人
俺の周りにはいつも人がいる。女や慕っている奴ら、たくさんいた。

けどそいつは唯一俺の人生の中で俺に何も興味持たずに、関わろうとしていなかった。
織原和人
織原和人
それに興味が湧いたんだよ。いくら口説こうとしてもガン無視、いつも冷めたように単調に話す。それに惹かれていった。
五条悟
五条悟
自分のものにすれば、周りがもっと寄って集って注目されるだろうと?
織原和人
織原和人
そーゆーこと!
いいね、おにーさん。わかってんじゃん。
五条悟
五条悟
わかりたくないけどね。
そして微塵も共感なんてしねぇよ。
織原和人
織原和人
__まぁ続けるよ。


だから俺は告白した。どうせ俺なんかを断りはしねぇだろって。断わったら虐められるだろうしね。俺の周りの奴らに。

だけど俺はまんまと振られたよ。
しかも振り方が
俺なんかと付き合うより他の女と付き合う方がマシって言われたんだぜ?
織原和人
織原和人
最初は別にムカつくくらいですんでた。どうせ周りのヤツらが虐めるんだからそれで後悔するだろって。でも"違った"。
織原和人
織原和人
誰一人としてあなたに近ずかなかった。
どうして殺らねぇんだよって脅しても、奴らはあなたにいってもアイツには何一つ届きはしない。言っても無駄だし殴りに行ったやつは全て返り討ちに会うだけ。
五条悟
五条悟
___もしかして荒れてた?
黒崎
黒崎
いや別に。今そうされてもそうしますよ、変わってないですそこら辺は。
織原和人
織原和人
そんで俺の完璧な人生が、プライドが壊された。そして思った。俺自身があなたの精神を壊してやりたい。それも殴るとかそんな甘ったるい考えじゃない。どうせなら大切なヤツら全部壊して、狂わせてやりたいって。
織原和人
織原和人
その初めが"石上"だよ。
黒崎
黒崎
____は?
織原和人
織原和人
石上が人の彼氏を奪ったデマを流したのは俺なんだよ


織原が嘲笑うかのように口角をあげた。


織原和人
織原和人
石上と仲良さげだっただろ?なら最初に石上を死なせればいいと思った。だから陥れた。そしたら石上死んだだろ?俺の予定通りでほんとに良かったわぁ〜お陰でお前も傷ついたらしいしね!
織原和人
織原和人
人間ってデマ流しただけでこれだぜ?簡単に死ぬわ信じて虐め始めるわでしょーもねー生き物だよなぁ…?
黒崎
黒崎
…しょうもねぇのはテメェだろ?
その口黙らせてやるよ、クソが。
織原和人
織原和人
黙らせる?俺を?
っはは!そりゃどーだか!!
俺は続けるよ?だってまだ"終わってないんだし"
五条悟
五条悟
____っ!あなた!
黒崎
黒崎
は___


瞬間的にあなたを庇った。


どうやら織原が攻撃を仕掛けてきたらしい。あいつ、呪術使えないんじゃなかったのか。



いや、ありえるな。
今まで隠してきた可能性もある。
だけどこの呪力……どこかで………
五条悟
五条悟
____お前、まさか
ツギハギにされたか?
織原和人
織原和人
正解!!やっぱあんたやるね!
俺は最初から"捨て駒"だったんだよ。
黒崎
黒崎
どういうこと…?
五条悟
五条悟
__あいつ、最初からツギハギの特級にとってはただの駒でしかなかったんだよ。そしてそれを織原も理解していた否、その上で取引をした。自分の命と引替えにね。
黒崎
黒崎
じゃあ、織原は
五条悟
五条悟
___"改造人間"だ。
織原和人
織原和人
改造人間つってもアイツらみたいに醜くはならないけどね!ただ俺は特別で、呪力をもって戦えるようになった。
織原和人
織原和人
___"傀儡操術"
擬似神器召喚!
黒崎
黒崎
それは___
五条悟
五条悟
三種の神器のひとつ、
草薙剣(くさなぎのつるぎ)
織原和人
織原和人
とはいえ、擬似、だけどね。
真似たまでさ。でも、この力に勝てるかな?
五条悟
五条悟
あなた!
黒崎
黒崎
っ!五条先生!
私がやるから!大丈夫!
あんたは帳を張って…!
五条悟
五条悟
(確かに…俺は広範囲の技しか使えない。あなたの手助けは、できない。)
五条悟
五条悟
___なら任せたよ。これも教師の務めだしね。
五条悟
五条悟
"闇よりい出て闇より黒く、
その穢れを禊ぎ、祓え"
五条悟
五条悟
……あなた、
黒崎
黒崎
___!
五条悟
五条悟
負けるなよ、そいつにも、自分にも。
飲み込まれるな。
黒崎
黒崎
……?はい、
織原和人
織原和人
___さ、戦闘開始だ。

episode20へ続く。

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