第26話

✧︎episode:18✧︎
449
2021/02/06 13:51


もしもあいつが私を狙わずに親しい人を殺すのであれば、居るならきっと、私の"家族"だ。


細かく言うと、凛の父親と母親である。






私は今、その2人が住んでいる、私がもともと住んでいた家へと直行する。



黒崎
黒崎
黒竜!


万が一戦闘になった場合に備えて黒竜を顕現させておく。



こうしているうちに、私はついに我が家へとたどり着ていた。


黒崎
黒崎
……誰かいる……


こんな夜中にバタバタと騒がしい音がするのは怪しいと、窓から突き破って侵入する。



するとそこに居たのは、


父親でもなく、母親でもない、"呪力を持った" "何か"



おそらく呪霊の類かと思われたが、違う。


呪力を感じたが、これも残穢だと気づいた。そして、今目の前にいる何かが、誰かの形によって変わってしまったのだろうと理解した。




この家に来てからは、今目の前にいる2つの何かしか会っていない。



___もう、身体ではとうに理解していたのだ。ここに、私の知っている姿をした父親と母親はいないが、今、"私の目の前に居るのだ"と



今、目の前にいるのは、

姿形を変えられた、"父親と母親"なのだった。







いつも父は腕時計をしており、
時間にマメだった。


母は結婚指輪にチェーンを通したネックレスを常につけていた。






それが今、姿の違う者に当てはまったのだ。





凛の母、父
あなた………二、げテ…?
黒崎
黒崎
っお母さん!お父さん!
お願い!目を覚まして!


襲いかかってくる父と母、

それを黒竜の竜の姿で受け止めるも、2人はいつまでも戦おうとしてきた。



凛の母、父
~~~~!
黒崎
黒崎
っ!


不意を打たれそうになり、咄嗟の行動で黒竜を刀の形にしてしまい、父の腕が簡単に切れてしまった。




凛の母、父
____!
黒崎
黒崎
…っ…は…ぁ…はぁ…!
黒崎
黒崎
…どうすれば、いいのよ……
黒崎
黒崎
っどうして!!!!
なんでっ!!母さんと父さんが!!っ



涙が抑えきれない。


殺したくない。


でも、身体は染み付いていた。


最近まで何も思わず祓ってきた私の身体は、意志とは反対に動いていた。


黒崎
黒崎
っうぁぁぁぁぁあ"あ"あ'あ"あ"っっ!



顔に血がこびり付く。



生々しい音と、バサバサと切り裂く音が響き渡るだけで、それきり、呪霊は何もしてこななった。




同時に、実感した。

___私は今、両親を殺した。





凛の母、父
………アアァ……トォ……
黒崎
黒崎
______



それきり、私の思考は一気に真っ暗になり、停止した。














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5⃣side














七海健人
七海健人
報告は以上です。
今後、私と虎杖くんは吉野順平の呪詛師であるかないかの調査と、あの"改造人間"を創った呪霊に接触するつもりです。
___そちらは、まだ何も?
五条悟
五条悟
…そうだね。まだ見つかってないよ。
また進展があったらよろしくね。
七海健人
七海健人
そうですか…貴方も、彼女を探すのであればもっとほかの呪術師に要請すれば早いのではないのですか?
五条悟
五条悟
確かに見つかる手は早いけど、もし野薔薇や恵に言ったら混乱するでしょ。恵なんかはもっと気を負うことになるだろうし。
五条悟
五条悟
それに、これは僕がすべき罪の償いみたいなものでもあるんだから。七海は引き続き捜査を頼むよ。…重い任務をこなしてもらうって言ったけど、こんなはずじゃあなかったんだけどなぁ、
七海健人
七海健人
……また会えるのを期待して待つことにしましょう。では、これで失礼します。
ピッ
五条悟
五条悟
……ほんと、どこ行ったんだよ。"あなた"


呪詛師の可能性があった織原和人との接触からあなたは数日たっても姿を現さなかった。


恵から聞くと、どうやら攫われたわけではなさそうで、あなた自身がどこかへ行ってしまったらしい。



音信不通、生存確認もできていない。
あなたのことだ、きっと理由なく去っていったのは有り得ないだろう。








そうこうしていると、ある事件が起きた。
映画館での変死体が発見され、そこにはしっかりと呪力の残穢が記されており、後に、変死体は男子高校生3名、何者かによって脳を弄られ、現場の監視カメラには、ツギハギの長髪頭の人の形をした呪霊__おそらく特級。


そして、その呪霊が去っていくと同時に、追いかけた非術師。

現在、この事件を解決するために悠仁と七海が動いている。







そして、その変異体は脳が死んでいても、意識とは反対に襲いかかってくるらしい。


それも、変異体は各地でまばらに起きている。一体何を考えているのだろうか。




五条悟
五条悟
(織原との接触から始まったんだ…きっと奴も関係者なはず。)
五条悟
五条悟
彼の経歴は…っと、
五条悟
五条悟
……ふーん、いたって普通だね。
"中学3年の前期"ぐらいまでは。
五条悟
五条悟
(あなたとも同中、そしてあの口ぶり、あなたとは結構接触があるのかな?)
五条悟
五条悟
高校も別に一般の公立高校。呪術とはなんら関係もないはず、なのに、
五条悟
五条悟
……結構警察に厄介になってるっぽいね、
五条悟
五条悟
(それも大体女関連。ストーカー、盗撮、痴漢、暴漢…くだらねぇ)
五条悟
五条悟
ん?なんだこれ、


次のページへ捲ると、何かのDVDが挟まれていた。





試しにパソコンへ繋いで見てみると、

五条悟
五条悟
___は?




出てきたのは"あなた"


呪術師になり、暫く俺との関わりが減ったあたりまでが映っていた。



音声はない、だが、それは全て呪霊を祓っているところだった。



スキップしても、また祓い、祓い、祓う姿が映し出される。








その映像から暗転し、別の映像が流れる。


____ツギハギの特級、
五条悟
五条悟
ツギハギのおかげで見えたって感じか…あなたが何か見えてたのは勘づいてたのかな。




五条悟
五条悟
………直接聞きに行くしかないな。





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五条悟
五条悟
硝子、各地にいる変異体の事だけど何かわかった?
家入硝子
家入硝子
あぁ…あの改造人間のことね。
あれは脳が弄られて操られてる人形みたいなもんなのは知ってるでしょ?
五条悟
五条悟
それはね。
お前に聞きたいのは、"誰が"やったのかだよ。憶測でもいい、聞かせてよ。
家入硝子
家入硝子
…………はぁ、


電話越しからも聞こえてくる硝子のため息、どうやら大体予想はついているみたいだな。






家入硝子
家入硝子
___あのツギハギ呪霊だろ。
あの吉野順平とかいう子は違うね、そんで、あんたが探してる織原も違う。
五条悟
五条悟
理由は?
家入硝子
家入硝子
意味もなく人を殺すなんて呪霊以外にいないでしょ。吉野順平には動悸がないし、織原はあなたに対する面倒臭い感情をまだもってるらしいしね。もし織原が殺すとしても、あなたか、もしくはあなたの親族を奪うってとこだろ。あなたの可能性は限りなく低いがな。
五条悟
五条悟
………OK、決めた。
ありがとな硝子。
家入硝子
家入硝子
あの子を、取り戻しに行くの?


もう、あの子が呪術師として戦う必要はないんじゃない?と、硝子が言う。


きっと、毎度毎度彼女の酷い傷を診ているから出た言葉なのだろう。




それとも、何か、
女の勘、というやつか。

五条悟
五条悟
………それは、俺もわからない。
家入硝子
家入硝子
何それ、
五条悟
五条悟
俺自身も、どういう理由で動いてんのかわかんないだよね。
家入硝子
家入硝子
それはあんた、あなたのことが大切だからでしょ?
五条悟
五条悟
____



違う、そうじゃない。




確かに、生徒の命は亡くしたくない。
大切な存在だよ。




でもきっと、硝子のいう"大切な人"は違うんだろ、






俺はあなたの事を、そんなふうに想っては駄目なんだ。



家入硝子
家入硝子
もしあなたがあんたに気持ちを伝えたなら、どう答えるつもりなの。
五条悟
五条悟
………
家入硝子
家入硝子
……適当に応えたら容赦しないからね。
あんたもそこんとこ、自分に向き合いなさいよ。
五条悟
五条悟
…っはは、はいはい。
家入硝子
家入硝子
じゃ、
ピッ
五条悟
五条悟
(___俺はあなたになんて答えるんだろう。)



答えは1つしかないはずなのに、

そう決めたはずなのに、




どこかで逃げている自分がいた。

五条悟
五条悟
(今は___いい。とりあえず、"あの家"へ行ってみるか。)










俺は先生で、彼女は生徒。



それ以上の関係はない。




あの子と出会って、なぜ勧誘したのかは、自身の夢の為でもあった。

そして興味が湧いたからだ。
この子はきっと、強くなると。



でも、それ以前に、
俺にしては珍しい、善意。

____いや、結局は地獄へと導いたんだ、そんなわけないか。





ただ、助けたいと思った。

このまま自分を追い詰めて死ぬよりかは、地獄へ導いてまでも、生きて欲しいと思ったんだ。



俺が過ごした、あの素晴らしかった日々も知らない、あの無垢な瞳を俺は見過ごせなかった。



いずれは仲間達が増えて、憎しみや怨み以外の感情以外にも、たくさん感じてほしかった。辛くても、乗り越えて行って。



あの透明であり、呪うこと以外には何も知らない、あの瞳が、次に何を移すのか。











五条悟
五条悟
___俺は、もうとっくに。
本当の気持ちなんてわかってる。
五条悟
五条悟
(それでも俺は__傍にいるべきじゃない。



暗い夜道を歩いた先、



たどり着いたのは凛の両親…あなたの大事な家族がいる所だ。





明かりもついていない、ということは、やはり___
五条悟
五条悟
………ごめんな、






きっと、この家にあなたがいる。






少し前くらいに、通達があった。



あなたの家族の家にツギハギの呪霊の残穢が確認されたと。



それと、そこにはほかにも呪力の残穢が残されていた。




もちろん、それは___






五条悟
五条悟
…………あなた、
黒崎
黒崎
…………



リビングには横たわる変異された改造人間、否、あなたの家族の姿。


感じてくるのは、ツギハギの残穢もそうだが、あなたの呪力も感じられた。




一歩づつゆっくりと近ずいていくも、


黒崎
黒崎
……っ近寄らない、で。
五条悟
五条悟
…………


その歩みを止まらざるを得なかった、

黒崎
黒崎
殺したのは、わたしです。
黒崎
黒崎
わた、しは、殺すことに"慣れすぎた"
黒崎
黒崎
このままだったらわたし、人間じゃなくなるんじゃないかって、思って、それで、
五条悟
五条悟
あなた
黒崎
黒崎
……違う、もう私は人じゃない…!こんな、殺すなんて、わた、わたしは、
間合いを詰めて
あなたの肩を掴み、抱き寄せる。



五条悟
五条悟
あなた!
黒崎
黒崎
…っ、さわ、らないで……!
五条悟
五条悟
どうして?
黒崎
黒崎
けがれてしまう…わたしはそんなの嫌なの…!両親を殺す娘なんて、人じゃない…!普通じゃない…!
五条悟
五条悟
あなた、あなたは汚れてなんかないよ。
黒崎
黒崎
は……じゃああんたは…!
人を殺したことあるの!!!
五条悟
五条悟
あるよ、
黒崎
黒崎
………っ
五条悟
五条悟
俺も、大事な奴を亡くした。
俺がそいつをちゃんと見てなかったから、そいつは堕ちた。
五条悟
五条悟
そんで殺した。
呪詛師になったそいつを、この手で。
黒崎
黒崎
……………


やっとあなたが顔をあげた。



涙で睫毛が輝いていて、窓から光が差し込んで、幻想的で、とても綺麗だ。





俺の手を彼女の頬へ添えるように触る。
涙の跡で少し湿っていて、溜まっていた涙も指で拭ってやった。





五条悟
五条悟
…正気じゃないんだよ、俺は。
如何なる場合での呪霊も殺すし、大事な人をこの手で殺した。俺の方が、汚らわしい。




実際、彼女に触れているこの手は、大勢の命を無くして、殺してきた。



きっと目に見えなくても、
血で真っ赤に染められ呪われているんだろうな。




五条悟
五条悟
でも、あなたは違う。
この間の怨霊を祓ったときもそう、
僕らとは違う感情を持ったんでしょ?
次に生まれてくるときは、呪霊や怨霊なんかじゃなくて、普通の人生を送れるようにって。
黒崎
黒崎
…!
五条悟
五条悟
そんなこと考えられるのなんて、あなたしかいないよ。呪術師なんて、実際普通っていうまとまりでは表せないんだから。
五条悟
五条悟
殺したことには間違いないかもしれない。けど、それでも僕ら呪術師は、祓ってやらねばならない時がいくつもある。
けど君ならきっと、僕らじゃ持つことのできないその優しい感情を、祓っていたとしてもそれを忘れないでいてくれるなら、救われる奴がたくさんいる。
五条悟
五条悟
君にしか、出来ないことだ。

たとえこんな最強な僕でも、絶対にできない事だってある。その優しい心を、どうか忘れないで。
黒崎
黒崎
………なんだか、私、あんたに呪われて死んでいきそう。
五条悟
五条悟
__っはは!確かに、君のことになるとどうも駄目みたいだ。
黒崎
黒崎
____今思えば、なんで怖かったんだろう。母さんと父さんに呪われてしまうと思ったからかな、そんなこと、もうとっくにやられてるのにね。
五条悟
五条悟
どういうこと?
黒崎
黒崎
____愛の呪いってやつですよ、
五条悟
五条悟
………あぁ、それなら、僕にもあるよ。
黒崎
黒崎
え、あったんですか。
五条悟
五条悟
ちょ、それ酷くない?






どんな君だって、僕は受け止めるよ。




呪術師を辞めた君になっても、呪詛師になった君でも、ぜんぶ。





呪って、呪われて、そんなことを繰り返していく毎日を過ごして、






たとえその傷が癒えなくても




僕は君を_____
黒崎
黒崎
………あの、織原はなにか動きありましたか?
五条悟
五条悟
あ、あぁ、彼はほぼ確定で呪霊と繋がってる可能性が高い。今はその呪霊を七海と悠仁が追ってる。あなたは僕と一緒に織原を捜索、そして連行、事情聴取かな。
黒崎
黒崎
__その呪霊、私にも1発殺らせてくれませんか、
五条悟
五条悟
駄目だね。七海から連絡があったけど、どうもその呪霊、簡単に言うと触れると死ぬみたいな術式を持ってるらしい。
黒崎
黒崎
でも、それじゃ健人さんが危険なのは変わりないじゃないですか、
五条悟
五条悟
それはあなたがいっても同じことだよ。奴を殺したいのはわかる。けど、七海達ならきっと大丈夫だ。これ以上被害を出さないようにする為にも、僕らは織原を捕まえる。それが僕らが七海達のためにできることだよ、
黒崎
黒崎
…………あの、話をしなくてはならないんです。
五条悟
五条悟
何?
黒崎
黒崎
____私と、織原のことで。
→episode19へ続く。














作者
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更新遅くなりましたすみません🙏🏻
オリジナル要素ぶっ込んでるので変だったら申し訳ないです…。

あと、長すぎてごめんなさい。

次回はなるべくはやめにだせるように頑張ります!たくさんのお気に入り、いいね、ありがとうございます。🥰

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