第13話

✧︎episode:7✧︎
659
2020/12/21 08:09


意識を取り戻して初めに見たのは
あの特級が現れた工場の廃墟のままだった。


たが、あたりに呪霊の気配もなく、あの特級の姿もない。



しかも_____




五条悟
五条悟
…あなた?
黒崎
黒崎
っあ…五条、せんせい。
五条悟
五条悟
っ…まって。あばらのとこ骨折れてるから。じっとして。呼吸も辛いと思うけど、ゆっくりね。

いや、なぜ先生が


黒崎
黒崎
先生…なんでここに……?
五条悟
五条悟
任務はもう終わらせた。
暇だからあなたのとこ来たらあなたは倒れてるし特級いるし。
黒崎
黒崎
あ…そうだ…特級…
ありがとうございます…。
五条悟
五条悟
それはいいの、

…あの領域はあなたの?
黒崎
黒崎
まだ不完全ですけど…
いちおう、踏ん切りがついたというか…っ…
五条悟
五条悟
…そっか。頑張ったね。


でも___
傷を負った所を触りながら、頬をすり、と撫でる。


だが、彼の表情は怒りで塗れているように見えた。
五条悟
五条悟
___この刀は?


すっとまたいつもの表情に戻り、変化した黒竜を見ていた。


黒崎
黒崎
あ…これ、私が領域をつくる時に覚醒した黒竜です…今までの倶利伽羅剣はもうないですけど…それに筆頭するくらいの強さを持つ、私の武器です…
黒崎
黒崎
いろんな形に変形できるぶん、この呪具しか扱えませんが、後々もっと闘う選択肢が増えるようにしていきたいです…
黒崎
黒崎
そういえば、悠仁たち…
元気にしてるでしょうか…
五条悟
五条悟
あなた………

実は、報告することがある。
黒崎
黒崎
え?
五条悟
五条悟
____悠仁が死んだ。



それは、唐突なことだった。
黒崎
黒崎
な、んで…っ
五条悟
五条悟
高専1年が特級がいる現場に派遣された。
これは異常事態だ。僕も何も聞かされてないし、特級相手に1年派遣は流石におかしい。

__明らかにこれ、上がしくんだ事だ。
僕とあなたを向かわせずに、
悠仁を、殺すために。
黒崎
黒崎
悠仁が、特級に殺されたんですか…?
五条悟
五条悟
いや、正確に言えば、

特級と戦うために宿儺と変わり、戻るつもりが悠仁は戻れなかった。そんで、宿儺が恵のとこへ行って戦ったんだけど、そこで宿儺が悠仁の心臓をとって、元に戻った悠仁は死んだ。
__恵が、それを見届けた。
黒崎
黒崎
そ____んな、ことって、
黒崎
黒崎
悠仁は__悠仁はっ!
宿儺なんかに負けない!殺すべきじゃない!
彼は、彼は___
五条悟
五条悟
あなた、
黒崎
黒崎
__そんな絶望、味合わせたくなかった…



うまく叫べない、声にならない声を、
涙と共に、零した。



もう彼には、会えないし、話すこともできないんだと。

命の儚さは、やはり時に残酷な刃を突きつける。
五条悟
五条悟
__僕は上を許さない。

悠仁は、僕に並ぶくらいの、術師になるはずだった____
黒崎
黒崎
…先生、
下を向いていたその顔がこちらを向いて
悔しそうな思いを私に感じさせた。




悠仁は死んだ。





その為に私がやれる事は?
なんで悠仁が殺される羽目になるのか、
両面宿儺を食べただけで、
特級呪物を食べただけで、

保身や伝統ばかりを気にして、
たった1人の命すらも簡単に殺した上層部を、



私は許せなかった。

うだうだ何も考えてなかった私をも
許せなかった。
黒崎
黒崎
……もう、上の指示には従いません。
信用できない。
黒崎
黒崎
__あなたに、ついて行きます。
貴方の夢を、叶えたい。
五条悟
五条悟
本当に、いいの?
黒崎
黒崎
はい。覚悟は決めました。
それと、今まで、ごめんなさい。
五条悟
五条悟
…いや、ありがとう。すごく嬉しい。
やっと振り向いてくれたね、心強いよ、ほんと。
五条悟
五条悟
____もう、帰ろうか。
あなた、ちゃんとしがみついてて。
黒崎
黒崎
え、でも、
五条悟
五条悟
怪我人なんだから、
なるべく振動しない方がいいでしょ?
帰ったら硝子に診せるから。


…そこにもう、悠仁がいるから。
ついでにそれも見てもらう。
黒崎
黒崎
……はい。
私をおんぶして歩き始める。


骨が折れた痛みと、命を失った痛みが
私に突き刺さるようにくる。



沈黙からしばらくすると、
彼から話し始めた。
五条悟
五条悟
……辛い?
黒崎
黒崎
__はい。
悠仁と会ったのは、本当につい最近の事です。長く一緒に居ないけれど、彼の人柄は、根っからの善人だ。それなのに、こんなに呆気なく、死んでしまうものなんだなって、改めて、思いました。
五条悟
五条悟
そっか、あなたは
そう思えるんだね___
黒崎
黒崎
__五条先生は?
五条悟
五条悟
僕も、辛いよ。




返答は、それだけ。





けれど深く掘り下げようとも思わなかった。
こんな状況で、そこまで頭が回らなかった。


けど、ただ確かにわかるのは___










彼は、酷く寂しそうに、悲しそうな
様子だった。

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作者
作者
補足すると、五条先生はあなたを遠ざけておいて、休暇、兼任務といって彼女に怪我を負わせたのにも怒ってます。


なのになぜ何もいわないのか、
それはきっと、"教師"という自分の立場を理解しているから。


言い出したらきりがなく、
全てでてきてしまいそうになるから、


だから言えなかった…
ということです。
作者
作者
では8へ続きます。
更新はやめに頑張ります。

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