第11話

✧︎episode:6✧︎
680
2020/12/20 16:11


気づけば夢の中に浸っていた。





周りには凛や今まで亡くしてしまった人達、そして、私が使っていた"黒龍"
折れた倶利伽羅剣があった。



黒崎
黒崎
………


ある意味で、地獄だった。
亡くしたもの、人達を見るのはとても辛かったし、心地のいいものでは無い。


けれど、向き合わなければ、

私はまだ__《戦ってすらいない》



黒崎
黒崎
……凛、ごめん。まだ、そっちには行けないの。約束したのに、ごめんね、
黒崎
黒崎
私、高専に入っても、すごく辛かった。
あの日の凛の姿が目に焼き付いてて、その度に私の不甲斐なさを痛感して。
任務でたくさん祓っても祓っても、呪霊がおさまることなんてないし、私の気持ちもおさまらないし、呪霊が出る度に、犠牲者が出ることだってある。救うことの出来なかった命がある。そう思うと今でも、すごく辛い。逃げ出したい。
黒崎
黒崎
……でも、立ち止まっちゃ、いけないの。

ここで逃げたら…一生私は私を許せなくなる。
黒崎
黒崎
自分のことしか考えてないって、わかってる。けど、せめて自分は自分らしくありたいって思えた。
黒崎
黒崎
私は、呪術師以前に1人の人間なんだ。
怖くても、痛くても、それが人間なんだ。

そんな私を、私は受けとめたいの。
これからも"呪術師"であれるように



…いつしか、彼に言われた。
『孤独を愛さないで』と。






そうなんだ。私は1人になりたいんじゃなくて、1人になろうとしていた。この世界から逃げるように、自分を否定して。








もう、過去には戻れない。

凛はもう二度と、会えない。

亡くなった命は、戻ってこない。



でも、それが人間で、

それが人間の美しさなんだ。



だからもう、"前を向くしか道はない"
黒崎
黒崎
……倶利伽羅剣
黒龍(倶利伽羅剣)
………
黒崎
黒崎
前を向くって、言ったよね。
それでも今はまだ、貴方達の力が欲しい。

だからもう一度___私を呪って。
折れた刀にはもう、力が無かった。
なんの呪力も、何も込められてないのに、




折れた刀は、動いた。





黒崎
黒崎
……っ!
刀から見慣れた黒い龍がでてきて、

その黒い龍は人の形をした誰かになった。


この姿は_____







黒崎
黒崎
不動、明王。
不動明王
貴様がこの倶利伽羅剣を使用していた者だな?よく知っている。
黒龍(倶利伽羅剣)
どんな境遇をもってしても折れた刀は戻らない。もう、二度とな。
黒崎
黒崎
…はい。その"命"は、私が犠牲にしてしまったものです。
不動明王
ふん……これを命、というか。
黒龍(倶利伽羅剣)
なぜまだ使おうとするのだ。
黒崎
黒崎
…確かに、この刀はもう使えないかもしれない。けど、このままで終わるのは嫌なの。黒龍と共に戦った思い出も、無くしてしまう気がするから。
黒崎
黒崎
私はその分の痛みも背負っていきたい。そしてこれからも、この刀と共にいれるのなら、今度は私が"死なせない"
黒龍(倶利伽羅剣)
矛盾しているな、
黒崎
黒崎
…そうかも。
黒龍(倶利伽羅剣)
だが、聞け娘よ。

この黒龍、まだ死んでおらん。
黒崎
黒崎
え…?
黒龍(倶利伽羅剣)
かつて__不死殺しという名がついた。その名の通り、不死者の者でも殺す。矛盾した刀がこれだ。
黒龍(倶利伽羅剣)
だがこれは本当だ。

不死殺しは本当の事なのだ。

__娘、何を言いたいか分かるか?
黒崎
黒崎
えっ、と、ごめんなさい。
どういうこと?
黒龍(倶利伽羅剣)
___矛盾は決していいものではない。
とは"限らない"
黒龍(倶利伽羅剣)
矛盾しててもよいではないか、

この世界、実際は矛盾する事ばかりだ。
人間は誰しも、矛盾していても行おうとする。"自分の意思を貫く為"にも。
黒崎
黒崎
………!
より一層、刀に纏う黒い炎が燃え上がる。

黒龍(倶利伽羅剣)
娘よ、聞こう。


お前のその矛盾する意思を、
お前は最後まで矛盾する世界で、貫き通すのか?
黒崎
黒崎
…貫くよ。


自己中心的だってわかっても。
それが"私"だから。
黒崎
黒崎
それに私は、この刀と共に闘いたい。思い出だけじゃない、この刀は、私といれば、もっと強くなれる。
黒龍(倶利伽羅剣)
…ふっ。
随分自信があるようだな。
黒崎
黒崎
…そうね、
随分と誰かさんと一緒にいたからかも。



____生きなければならない。








待ってる人がいる、

共に闘いたい仲間がいる、


__もう、前の私とは違う。




凛、私いまひとりじゃないよ。

頼りになる人がたくさんいる。

守りたいものも沢山増えた、

呪術師になってからつらいこともあるけど守りたいものが増えたのは私にとってひとりじゃないんだって、ひとりで戦ってるんじゃないんだって思わせてくれた。


だからまだ、私は呪術師である私でありたい。


ごめんなさい、凛。
でもきっとあなたなら、こう言ってくれると思うんだ。






凛

『精々幸せに生きなよね、!』

黒崎
黒崎
………


目の前にいた凛はだんだんと薄くなって
儚く消えていった。

周りにいた犠牲者達も1人1人立ち去っていく。





もうじきこの夢も___終わる。




これは私の"空間"


私自身が創り出したものである。
私が私を殺すのか、生かすのかの境界線。


この空間から抜け出すには、やはり、
領域を生み出すことが必要だ。



でも、今の私なら_____


黒崎
黒崎
__黒龍、もう一度、私と戦って。


そう言い放った瞬間、
折れた刀が治ってゆく。

不動明王の力なのだろう。
彼にも、感謝をしなければ。


黒崎
黒崎
ありがとう。
治った黒龍は打刀の形ではなかった。
もう、以前のような姿ではない、が__
黒龍(倶利伽羅剣)
__この刀は覚醒した。

1度死んだことによって、もとの形質を持っていないが、その代わりに、持ち主の意志と
"考え"によって変形する。
黒崎
黒崎
考え…創造しろということね、
黒崎
黒崎
(私が持つ黒龍なら___)


芯が強く、もう折れたりしない。

その中に美しい呪いを灯す、

熱い魂を宿す、竜となれ____!




黒崎
黒崎
わっ…
黒竜
____
あなたの創造する刀は

刀の種類でいうと太刀にあたる大きさで、
色は黒く太く、見ただけで屈強な姿であることがわかる刀だった。

呪力をこめて刃を振るうと紅暗い呪力の炎を灯された。


以前と余り変わらないように見えるが__
黒崎
黒崎
…すごい、これ、変形できる。

つまり、大太刀にも、槍にも、そして弓にもなれる万能かつ強力な呪具となった。




当然、もう以前の倶利伽羅剣ではない。

だが、これは完全にあなたの刀となった為、
倶利伽羅剣はこの黒竜に"託された"
黒崎
黒崎
__ここからでるには、貴方の力が必要。…竜、ここから出る為に、この空間ごと喰べて、すべて!
黒竜
~~~~~!


この真っ黒い空間から光が指していく。


その光は、絶望かもしれないし、希望かもしれない。


呪術師は、不安定な世界で生きて戦う。


それが時に、どんなに残酷だろうと、





__最後まで戦い抜くと決めたのだ。


------------------------------------------------
→episode:7へ

プリ小説オーディオドラマ