第4話

3話
282
2019/05/06 11:14
それから2日は、元の平和な日々が続いた。

達也先輩は何も変わらないし、ユキちゃんと話してみても普通だしで、あの光景は夢だったのかな、なんて思い始めていた。

――のに、さ。





また、達也先輩とユキちゃんが、キスしてる。





「っ……」

踵を返して、私は教室の前から走り去った。

なんで?どうしてなんですか、先輩。

先輩から告白してきたじゃないですか。好きって、言ったじゃないですか。

もう先輩の「好き」は、ユキちゃんのものなんですか――?

「あ、あなたちゃん!あのさ……」

1階と2階の間にある階段の踊り場で、星くんとばったり会った。

名前を呼ばれたけれど、今は精神的にとても話せる状態じゃない。

「ごめん、また後で」

申し訳なく思いつつ、星くんの横を走り抜ける。

が、それは阻まれてしまった。

「待って」

腕を掴まれ、無理やり踊り場に引き止められた。

「……離して」

下を向いて冷たい声を出す。

自分が今どんな顔をしてるか分からなくて、星くんの顔が見れない。

「……泣いてない?何かあったの?」

「泣いてない、大丈夫」

これは本当。涙は出ていなかった。

理由は分かっている。

「ちょっとショックなことがあっただけ……ごめんけど一人にしてほしい」

「……達也先輩とユキちゃんのこと?」

――え?

バッと顔を上げて星くんを見ると、やっぱり、という風に微笑まれた。

知ってたの……?

「なんか、たまたま見ちゃって。あなたちゃんが知ると傷つくだろうから、言わなかったんだけど……」

星くんがだんだんと声のトーンを落とす。

……気付かないうちに、気を遣わせてたんだな。

胸の内が、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

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