それなりに納得のいく仕上がりの直前練習を終えて、想像していたよりも広い舞台裏へ初めて足を踏み入れる。
最低限の灯りしかない黒い空間にひしめく若者たち。
前の団体の歌を聴きつつも、緊張、興奮、冷静と各々目まぐるしい表情を見せている。
それは3列目の左端を陣取った私達も例外では無い。
カールがかった髪に強い眼力を持つ彼女は緊張に足をじたばたさせている。
私は...ただひたすらに
ふと、前の団体の歌に耳を傾けてみる。
知らない合唱曲...かなり盛り上がった曲調をしている。クライマックスなのだろう。
リズムを掴んだと思ったら曲は終わってしまった。
少し遠くに聴こえる拍手と、次の私達を紹介するアナウンスが心臓を昂らせる。
列が動き出した。
舞台裏にいる数人の先生が笑顔で送り出してくれる。
そうして私は、煌々と照らされた舞台へと足を踏み入れた














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!