帰りになると、私は頑張ってテヒョンから逃げようとするのだが、
どこから私の行方を知っているのか、
突然目の前に現れる。
ぷくっと頬を膨らますテヒョンは、まるで小動物みたいだ。
いや、そんな可愛いものじゃないけど。
目をくりくりさせながら私の顔を覗き込む。
…まったく、いつになったら諦めるんだろう。
何をだよ。
少なくともテヒョンよりは 常識 というものを知っているつもりだ。
と、ここでまたミッションが発生する。
テヒョンが手を私に差し出してくるのだ。
つまり、
仕方なく、大きな手を掴んだ。
満足そうに笑って歩き出すテヒョン。
そりゃ私だってしたくてしてるわけじゃない、
ツンデレというわけでもない。
ただ、ここで手を繋がなければ
テヒョンは私を一生家に帰してくれないだろう。
昔、抵抗して本気で家に帰れないかと思った。
それ以来、私はこの命令に大人しく従う。
まあ、テヒョンの手が居心地悪いわけじゃないんだけど。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!