2月11日 10:29更新
〜拓人視点〜
この逃避行の生活を始めてもう4日が経った。
ふと上を見上げると、あてもなく漂っている蝉の群れがいる。
まるで俺らと似ている…。そんなことを考えてしまう。
山には自動販売機がないためもう水も無くなってきたため視界が揺れ出した。
また、山を巡回している警察官に出会った。
俺らは馬鹿みたいにはしゃぎあいながら鬼ごっこ感覚でその警察官を撒いた。
4日目はそんな事がありながらも地面に横になり眠りについた。
5日目の朝
俺が起きた頃には彼女が少し離れたところでナイフを握っていた。
彼女は俺が起きた事に気がついたらしい。
もうそっと近づくこともできなくなったため俺は聞いた。
そして君は涙や死にたくないという思いを堪えながら首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンみたいだ。
白昼夢を見ている気分になった。
気づいたらメメントリのメンバーに保護されていた。
俺は君がいないか確かめるために辺りを見渡した。
当然いるはずがない。
俺はメンバーの家から抜け出し走った。
何度も何度も君の名前を呼んだ。
だけど返事も君の姿もなかった。
君だけがどこにもいなかった。
そして時だけが過ぎて行った。
ただ暑い暑い日が過ぎて行った。
家族もクラスの奴らも生きている。
なのに…。
なのに…。
なぜか君だけがどこにもいなかった。
あの夏の日を思い出しながら僕は今も今でもいつだって君のことを思っている。
君のことをずっと心の中が探し、そして求めている。
君に言いたいことなんて山ほどある。
9月の終わりにくしゃみをし、6月のじめじめした匂いを繰り返している。
君の笑顔で
君の無邪気さで
頭の中はもう満たされている。
もう誰も何も悪くない。
君は何も悪くない。
だから
『もういいよ、投げ出してしまおうよ。』
その一言を最後に
俺は持っていたナイフで腹を切った。
あの夏が飽和する 歌詞
『昨日人を殺したんだ』
君はそう言っていた
梅雨時ずぶ濡れのまんま
部屋の前で泣いていた
夏が始まったばかりというのに
君はひどく震えていた
そんな話で始まる
あの夏の日の記憶だ
殺したのは隣の席の
いつもいじめてくるアイツ
もう嫌になって
肩を突き飛ばして
打ち所が悪かったんだ
もうここにはいられないと思うし
どっか遠いとこで死んでくるよ
そんな君に僕は言った
『それじゃ僕も連れてって』
財布を持って
ナイフも持って
携帯・ゲームもカバンに詰めて
要らないものは全部
『壊して行こう』
あの写真も
あの日記も
今となっちゃもう要らないさ
人殺しとダメ人間の
君と僕の旅だから
そして僕らは逃げ出した
この狭い狭いこの世界から
家族もクラスの奴らも
何もかも全部捨てて
『君と二人で』
遠い遠い誰もいない場所で
『二人で死のうよ』
もうこの世界に価値などないよ
人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか
君は何も悪くないよ
君は何も悪くないよ
結局僕ら誰にも
愛されたことなどなかったんだ
そんな嫌な共通点で
僕らは簡単に信じ合ってきた
君の手を握った時
微かな震えも既になくなっていて
誰にも縛られないで二人
線路の上を歩いた
金を盗んで
二人で逃げて
どこへもいける気がしたんだ
今更怖いものは
僕らにはなかったんだ
ひたいの汗も
落ちた眼鏡も
今となっちゃどうでもいいや
あぶれ者の小さな逃避行の旅だから
いつか夢見た優しくて
誰にも好かれる主人公なら
汚くなった僕たちも見捨てずに
『ちゃんと救ってくれるのかなぁ?』
そんな夢なら捨てたよ
だって現実を見ろよ
『シアワセ』の
四文字なんてなかった
今までの人生で思い知ったじゃないか
自分は何も悪くねぇと
誰もがきっと思ってる
あてもなく漂うセミの群れに
水もなくなり揺れだす視界に
迫り狂う鬼達の怒号に
馬鹿みたいにはしゃぎあい
ふと君はナイフをとった
君が今までそばにいたからここまで来れたんだ
だからもういいよ
もういいよ
『死ぬのは私一人でいいよ』
そして君は首を切った
まるで何かの映画のワンシーンだ
白昼夢を見ている気がした
気づけば僕は捕まって
君がどこにも見当たらなくって
君だけがどこにもいなくって
そして時は過ぎて行った
ただ暑い暑い日が過ぎてった
家族もクラスの奴らもいるのに
『なぜか君だけがどこにもいない』
あの夏の日を思い出す
僕は今も今でも歌ってる
君をずっと探しているんだ
君に言いたい事があるんだ
9月の終わりにくしゃみして
6月の匂いを繰り返す
君の笑顔は
君の無邪気さは
頭の中を飽和している
誰も何も悪くないよ
君は何も悪くはないから
もういいよ投げ出してしまおう
『そう言って欲しかったのだろう?』
『なぁ?』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。