2月11日 10:26更新
〜拓也視点〜
結局僕らは誰にも愛された事がなかったのかもしれない。
そんな嫌な共通点で俺らは知り合い、お互いのことを信頼し合うまでは行かなかったが信じ合っていた。
ふと頭に怖いという思いがよぎり、俺は
こう口にしていた。
君の手を握ったらさっきまでの震えもすでに無くなっていて
『俺も怖がっていてはいけない』
そう強く思った。
俺らはもう過疎しきったと思えるような山の中にある田舎町まで来ていた為、とても歩きづらかった。
だから
『俺らはもう何にも縛られていない』
そう思いながら錆びた線路の上を二人で歩いた。
ふと周りを見渡すと、あかりの付いている民家が一つだけあった。
金は充分足りていたが、この先のことも考え盗む事にした。
その民家の明かりが消えてから約1時間立ってからその民家にそっと忍び込んだ。
ここに住んでいるのは80歳くらいのお爺ちゃんらしい。
その家にあった10万円近くあった現金を簡単に盗む事ができた。
そのあとしばらく歩いていると警察官が話しかけてきた。
俺らは走って逃げた。
山だったこともありその警察官をうまいこと撒く事ができた。
俺らはこのままどこへでも行けるんじゃないか、そんな気もした。
だって今更怖いものなんて俺らにはなかったから。
俺は気づいたら額に汗をたくさんかいていた。
うたくんからもらった眼鏡もいつの間にか落ちてどっか行ってしまった。
いつもなら絶対気になることなのに
今となってはどうでもよく感じた。
だってこれは無法者でなっていない者の小さな逃避行の旅だから。
ふと彼女がこんなことを口にした。
俺はその言葉に対し、反射的にこう答えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。