連休明けの学校。
青江はエペルに姿を見られたと言っていたが、幽霊のフリをして誤魔化したという。
時間遡行軍が現れた日は敢えてエペルに何も聞かなかったが、昼休みだし食堂で会ったらさり気なく話でも聞いてみよう。

「全く、普段もだけど今日は乱し過ぎよ。見てらんないわ」と文句を言いながらもネクタイを整えるヴィル先輩。
誰かに似ている気がしたが……該当者が多すぎた。

両頬をつねられ、抵抗せず立っていると、今度はオクタヴィネルの三人が歩いてくる。
フロイド君に関しては「小エビちゃんほっぺ真っ赤で本当に小エビみてぇ」と笑っている。

これが、今の“日常”。
力を持たない人間のフリをしながら、誤魔化し偽る。
魔力を持たないことに関して生徒に馬鹿にされる日もあるが、嫌なことばかりでは無い。
長年もの間、俗世から離れていた僕にとっては、今回の任務……“人としての苦労”を知るいい機会でもある。

僕達の日常は、“過去の人々”の選択が未来へと繋げたもの。数多の犠牲や苦悩、選択から繋がれた人間達の日々を簡単に修正される訳には行かない。
修正されれば、人一人の人生でなく国……もしかしたら世界にまで影響が及ぶかもしれないのだから。
時間遡行軍の具体的な目的は不明だが、連中が現れればやることは大体決まっている。

頭を肘置きにされ、体重を掛けられる。
勿論アズール君やジェイド君はフロイド君を止める訳もなく、ただ「遊んでいないで早く食堂に行きますよ」と言うだけだった。まぁ、いつもの事だが……長谷部達が見たらなんて言うだろうか。

目的地が同じと言うことで、腕を引っ張られ食堂に連れて行かれる。
本丸では基本的に僕が振り回す側だから、こういう扱いは新鮮と言えば新鮮だ。

似ているとは言ったが、物理的攻撃はともかく……関わって物騒なのはこっちの双子であるのに変わりない。

そんなことを考えているうちに、あれ？普段温厚な性格が多い刀剣男士も中々に物騒なのでは？と今更再認識するのであった。