食堂に行き、料理を皿に盛っていると隣から誰かの視線を感じ、横を向く。
料理をとる手だけ動かしながらそんなやり取りをする。あなたはデュースやエース達と同じ一年生だというのに、躊躇いなくこうやってたまに僕にちょっかいを掛けてくる。
フロイド程では無いし、煽るなど、馬鹿にするような発言をしている訳では無いから今の所見逃してはいるが……一体何がしたいのか。
にしても、あなたの身内とはどの様な人達なのか。
先程言っていた“源氏兄弟”とは誰だろう。エースから聞いた話によれば“妹”が一人いるらしいが、あなたの家族構成は不明だ。
あなたの方を見ると、そこには笑っていたあなたの姿は無く、冷ややかで、でも何処か切なげな視線で遠くを見つめるあなたが立っていた。
リーチ兄弟が騒ぎ始め、離れた場所からアズールが「お前達。後ろがつっかえてますよ。早く行きなさい」と注意する。
その様子を見て保護者と子供か。とツッコミを入れたくなった。
家族との思い出の一つもないのだろうか。
随分とあっさり言うものだ。僕は正直……あなたが苦手だ。ちょっかいを出されるからでは無い。
特に何かされた訳でもない。けれど、皆が言うように何を考えているのか分からないのも含め、時折……ふとした時に謎の冷たさを感じる。今みたいに。
分からないフリをしていても、実際分かっているとでも言うような雰囲気をたまに感じ取る。
かと思いきや、次の瞬間は普通に笑っている。
バッと後ろを振り向くと、あなたは吃驚したように目を見開いて僕を見ていた。
トレイ達の隣を歩き、チラッとあなたの方を確認する。あなたは無表情のまま、黙って僕を見ていたが、僕の視線に気付くとニコッと笑ってエース達の元へと歩いて行った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!