第9話

第七章 花嵐 エペル視点
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2022/01/08 15:08
数日後、エースクン達と約束した日になり、夕方頃にオンボロ寮へ出掛けるとルークサンに話したら、「友と過ごす休日。実に楽しそうだ。出来る事なら私もトリックスターをもう少し間近で観察してみたいが……うん。行っておいで」と笑顔を浮かべた。
このノリは何時もの事なので今更気にしたりしないが、あなたも面倒な人に目を付けられてしまったなと、憐れんでしまう。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(ルークサン、最近は以前よりもあなたクンに興味抱いてるよなぁ。あなたクンストーカーされなければいいけど)
オンボロ寮に向かうのは良いが、皆と遊ぶのが楽しみで約束の時間よりも早めに出てしまう。
早く着きすぎてもあなたとグリムが準備中かもしれないし、僕は時間を潰す為に散歩も兼ねて学校近くの森を歩く事にした。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(他に誰も居ないせいかシーンとしてる。にしても、涼しいなぁ)
歩いている途中に立ち止まり、空を見上げる。
耳を澄ますと、サァッと吹く風に乗って人の声が聞こえた。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(誰か、居るのかな)
声がした方に進み、恐る恐る草むらから足を出すと──────────
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(……!)
声がした場所には、変わった衣装を着た長髪且つ白髪碧眼で色白の男性が立っていた。
背は高めで細身ではあるが、長い袖からチラッと見えた腕には程よく筋肉が付いている。
まるで、この世の者ではない雰囲気を漂わせる男性の腰元には剣らしきものが見えた。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(だ、誰?でもここは一応学校の敷地内だし……)
男性は僕を見ると一瞬目を見開いたが、直ぐ微笑んでから一歩一歩僕に近付いてくる。
審神者
審神者
君、僕の狐を見ていませんか?
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
狐……?
審神者
審神者
そう。黄色くて変わった狐なんだけど……あぁ、丁度君の隣に居るみたいな
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
隣って……
隣に視線を移した瞬間、何処からかブワッと桜の花弁が一気に舞い、視界が遮られる。
────────“花嵐”だ。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(これは、桜?咲く時期でも無いのにどうして……)
桜が止むと、男性の姿は無くなっていた。
気が付いた時には、桜の花弁も跡形もなく消えていた。一体何だったのだろうか。
エペル・フェルミエ
エペル・フェルミエ
(不思議な人だったけど……幻じゃない、よな?)
もう少し散歩したかったが、そろそろ時間というのもあり、僕は森から出てあなたに今の話をしようとオンボロ寮へ走った。

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